エンジンマウントの調整

エンジンマウントの調整 #

APtrikes125のエンジンはエンジンマウントの上に取り付けられ、車体とはエンジン四角(よすみ)の4つのスプリングを介して繋がっている。

こういう構造をフローティングマウントという。

振動を軽減するための構造だが、標準状態ではスプリングの 締め上げが強く、スプリングはあまり振動低減効果を発揮していない。

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結果としてエンジンの振動が車体に伝わり、振動、 騒音がとても賑やかなことになっている。

エンジンをおおよそ4,000回転以上回す気にはならないだろう。

筆者は初めてそれを体感したとき、APtrikes125に乗っていく自信がなくなり、APtrikes125を売却する選択肢が脳裏をよぎったぐらいだ。

結論から言うと、この状態はエンジンマウントを調整するとかなり改善される。

例えば標準状態ではアイドリング中はエンジンの振動でミラーが震え、写像がほとんど見えないが、調整後はアイドリング中でもミラーの振動はかなり減って、写像がはっきりするぐらいには違う。

エンジンも4,000回転以上回す気になる。例えば、6〜7,000回転は使っていく気になれる。

スプリングが締め上げられていることにも意味がある可能性があるが、調整前は売っ払うレベルだったのが、調整後は普通に使えるレベルになるので、調整前のエンジンからの振動がしんどいと感じたならば調整しない手はないだろう。

エンジンからの振動はネジの緩みや車体の折損につながる可能性があるため、できるだけ早いうちに手を打っておくことをおすすめする。

では、そのような状態に調整するにはどうしたらいいだろうか?

エンジンマウントの締め上げを緩くする #

最も簡単にはエンジンマウントのスプリングを締め上げているナットを緩めることで振動は低減する。

スプリングを支えるボルトはM10。ボルトの頭のサイズは対辺16mm。

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フランジナットのサイズももちろんM10で、対辺は14mm。

ただ緩めるだけでは振動でナットが緩んで外れてしまいかねないため、M10ナットをもう一つ用意し、ナット同士をぶつけ合うようにしてナットがそれ以上緩まないようにする。

いわゆるダブルナットというやつだ。

ダブルナット用に用意したナイロンナットは対辺17mm。

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ナットを選定する際には、使われているボルトやナットが鉄製なので電食しないようステンレス製は避ける。

どこまで緩めるかは結果次第だが、スプリングが完全に弛緩してしまうのでは困る。第一、緩めすぎるとスプリングからキキキキという異音がし始めて不愉快だ。

ある程度テンションがありながらも振動は低減できる程度に調整する。

そう言われてもどこまで緩めていいか見当が付かなくて困るだろう。

このエンジンマウントを調整する上で、一つ分かりやすい指標がある。

APtrikes125の扱いにおいては一人者の一人であるマルモリ氏の動画(後出)にあるが、アイドリング状態でのミラーの振動を一つの指標にするというものだ。

4本緩めてはアイドリング状態でミラーの写像を確認し、 振動が我慢できるレベルになったらダブルナットで固定するのだ。

緩め具合を統一するためにノギスを使い、ナットから突出したボルトの長さを測るといいだろう。

部品を追加・構成変更する #

エンジンマウントの改良のために、振動低減の部品を使用したり、 標準構成から変更することも行なわれている。

マルモリ式 #

さきほど話に出したマルモリ氏のもの。詳細なレシピは解説されないので、そこが知りたい場合はおもてなしホステル宮島式を参考にするといい。

マルモリ式インスパイアおもてなしホステル宮島式 #

それをフォローし、レシピ化したおもてなしホステル宮島氏のもの。

mokmok式 #

mokmok氏のもの。スプリングを外し、代替の振動低減素材を使うなど標準のものからかなり構成を変えている。

杉マウント #

Facebookグループで提案されている、スプリングもボルトも撤去して制振ゴムに置き換えてしまうもの。

冒頭で紹介した「エンジンマウントの締め上げを緩くする」より振動は増えるものの、心地よい振動になるとのことだ。

エンジンの傾斜をコントロールしやすい構成なため、後述する「プロペラシャフトの直線化(水平調整)」の布石にもなっている。

部品の構成は以下のような感じだ。

graph TD style C fill:#fc822B style D fill:#fcdf03 style F fill:#fc822B A[上側M10ボルト] B[スプリングワッシャー] C[エンジンマウントのステー] D[平ワッシャー] E[FGBA 50-50-M10-EE-55] F[車体側のステー] G[スプリングワッシャー] H[下側M10ボルト] A-->B-->C-->D-->E-->F-->G-->H

平ワッシャーの枚数は前側が2枚以上、後ろ側は0枚といった感じで、エンジンを後傾させるための調整の結果次第で可変だ。

「プロペラシャフト(ドライブシャフト)の直線化(水平調整)」の項を参照。

Facebookグループはプライベートコミュニティ。詳細が気になる人は以下のFacebookグループに参加し「杉マウント」あるいは「50-50-M10-EE-55」で検索すると知ることができる。

杉マウントを使う場合は、以下の動画も見ておいた方がいい。

ボルトを締める際にゴムバンパがねじれたままだと、その応力で後々取り付けステーが折れる可能性があるとのことだ。

この円筒形のゴムバンパだと、取り付けの際にねじれても分かりづらい。

ゴムバンパの上下にホワイトマーカーで印を付けてから取り付け、ねじれをチェックした方がいいだろう。

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強化エンジンマウント #

ジャパンドラッグが販売している強化エンジンマウントという製品もある。これも杉マウントと同じく、スプリング、ボルトを撤去して置き換えるタイプだ。

杉マウントがめねじのインシュレーターを使うのに対し、こちらはおねじのインシュレーター。所定の位置にセットするのがちょっと難しいかもしれない。

ナットを締めるのは円形の杉マウントのボルト締めよりやりやすそうだ。

強化エンジンマウントも杉マウントと同じくプロペラシャフト(ドライブシャフト)の直線化(水平調整)を志向している。

プロペラシャフト(ドライブシャフト)のある後ろ側は固いマウントで支点として機能させ、振動は柔らかいマウントの前側でいなすよう意図しているとのことだ。

ユーザーレポート

プロペラシャフト(ドライブシャフト)の直線化(水平調整) #

Facebookグループで提案されている「杉マウント」に関連して、プロペラシャフト(ドライブシャフト)の直線化というテーマが追求されている。

グループでは直線化ではなく、主に水平化、水平調整と呼称されているが、意味を汲むと直線化ではないかと筆者は思う。

どのようなものか?

APtrikes125のエンジンの動力を後輪に伝えるのはプロペラシャフト(ドライブシャフト)。

プロペラシャフト(ドライブシャフト)の両端は、ユニバーサルジョイントという関節構造になっている。

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駆動するエンジンから出ている出力軸と後輪に伝えるデフギアから出ている入力軸との位置関係は、デフギア側が低くなっている上、スイングアームになっているため走行中は位置関係が刻々と変わる。

それに対応するためにユニバーサルジョイントが付いているわけだが、エンジンの出力軸とデフギア側の入力軸の高さが違うと、ユニバーサルジョイントが毎回転ごとに動いて吸収することになる。

これによるフリクションロスを減らそうというのがプロペラシャフト直線化(水平調整)の目指すところだ。

プロペラシャフト(ドライブシャフト)はオーバーに表現すると八の字型に曲がっているといえる。

エンジン側のユニバーサルジョイントは、水平に設置されたエンジンの出力軸から、下に位置するデフギアに向かうために、下に折れ曲がっている。

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デフギアの入力軸の方は上を向いているが、エンジンの方を真正面にとらえるよりさらに上を向いているため、デフギア側のユニバーサルジョイントも、やはりエンジンに向かうために下に折れ曲がっている。

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前出の杉マウントは、エンジンの設置角度を後傾させ、エンジン側のユニバーサルジョイントが真っ直ぐになるようにセッティングするのがセオリーになっている。

具体的にはどうするかというと、4つあるマウントのうち、エンジン前側を固定するボルトにワッシャーをたくさん挟み、高くするのだ。

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すると、エンジンが後傾する。挟むワッシャーの枚数で後傾角を調整し、エンジンの出力軸とプロペラシャフトの軸が一直線になるようにする。

このような直線化(水平化)を実行するとプロペラシャフト起因の振動が減り、エンジンブレーキ時の挙動もモーターのようにスムーズになるとのことだ。

ちなみに、エンジンを後傾させても、デフギア側のユニバーサルジョイントの角度は取れない。

デフギアは溶接された固定用のステーで取り付け角が決まっており、それをどうにかしなければデフギア側の直線化ができない。

溶接を外してデフギアの角度を調整し、真の直線化を実現した例もあるようだ。

なお、この直線化(水平化)は、エンジンとデフギアとの位置関係を決定してからやらないと意味がない。

APtrikes125の快適化にリアサスペンションの変更は欠かせないが、リアサスペンションを変更すると得てしてエンジンとデフギアとの位置関係も変わるため、直線化(水平化)をやるなら、それを済ませてから、ということだ。

人が乗るとリアサスペンションが沈み込むため、完璧を目指すなら運転席に座った状態でユニバーサルジョイントの角度をチェックし調整することになるだろう。

調整後に運転席に乗った状態でスマフォでユニバーサルジョイントを撮影し、その写真を元に次の調整に反映する、というのが現実的な方法か。

筆者の事例 #

筆者は、レシピが詳しい「マルモリ式インスパイアおもてなしホステル宮島式」を採用した。

ナットの緩みを下を覗き込まなくてもチェックできるよう、ボルトは頭を車体下、ナットを上に変更。

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また、スプリングの緩め具合が足りないと感じたため、防振ゴムは外して、その分スプリング緩めの猶予に回した。その方が振動は少なかったためだ。

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その後、直線化(水平化)を意識して、エンジン後ろ側を下げる変更を行なっている。

この方式の場合、スプリングの締め込みで調節することになるため、杉マウント式と異なり、エンジンから伝わる振動が増えてしまう欠点がある。

それでも、標準状態のとてつもない振動、室内のとてつもない騒音はエンジンマウントの「マルモリ式インスパイアおもてなしホステル宮島式」化でかなり沈静化した。

エンジンマウントの調整は、可能な限り早い段階で行なっておくべきだ。やっていない状態では前述の通り車体の損傷を引き起こす可能性があるし、APtrikes125の真価を見誤る。

杉マウントはまだ試していないが、パーツは買ってあるのでそのうち試してみるつもりだ。

ショップに依頼してエンジンマウントの調整をしたいなら #

このエンジンマウントの調整はAPtrikes125の死活にかかわるチューニングだと筆者は考えるが、自分の手には余るという場合は、神奈川県・相模原にあるPRIMARIDEに相談するといいだろう。

PRIMARIDEは杉マウントも認知しているため、直線化(水平化)まで対応してくれる可能性が高い。