ブレーキの鳴き・異音対策 #
ブレーキがキーキー鳴くのと、ブレーキをかけていなくてもわずかにブレーキを引きずっているので対策した。
結論から言うと、今回紹介する作業で鳴きや引きずりはほぼ直った。
現象と原因の因果関係を単純化すると以下のようになる。これ以外にも原因がある場合もあるだろう。
現象 | 考えられる原因 |
---|---|
ブレーキの引きずり | スライドピンの潤滑不足 |
ブレーキの鳴き | ブレーキパッドに面取りがされていない |
この記事ではリアブレーキの手順を紹介するが、フロントブレーキはタイヤを外したりしなくていいのでもっと楽だ。
以前はリアタイヤを外すことに非常に大きな心理的抵抗があったが、トルクレンチとジャッキスタンドを買って何度かやって段取りを覚えたら、何ということもなくなった。
リアタイヤを外すことが造作もないという感覚が、APtrikes125の整備をやる上で非常に大きな財産になる。
納車整備次第だが、特段手が入っていなければ(※)新車にはブレーキパッドの面取りはもちろん、スライドピンにもグリスはほとんど塗られていないので、早い時期に手を打った方がいいだろう。
※: ジャパンドラッグ扱いのJDミゼット号(ショップオリジナルメニュー)の場合は、整備項目にブレーキパッドの面取りとグリースアップが入っているのでその限りではない
そのまま使っていると、スライドピンに傷が入ってスムーズな摺動が阻害される恐れがある。
筆者のものは新車から4000km弱で既に結構スライドピンに傷が入っていた。
これから納車の人は、納車整備でここもやってくれ、とお願いした方がいい。
解説しておいて何だが、ブレーキの整備をミスると大変危険なので、基本的には自分でやらず、今回紹介する作業内容をバイク屋さんに伝えてやってもらうべきだろう。
必要なもの #
- 使い捨て手袋([サンタン] ポリエチレン 手袋 使い捨て 300(枚/個) エンボス Mサイズ)

- 緩める用
- 普通のソケットレンチ用ハンドル
- 締める用
- トルクレンチ(ASTRO PRODUCTS 01-09695 1/2DR プリセット型トルクレンチ TQ969 01-09695)
- 適当な低いチェア(あるいは外したタイヤ)
- 19mmのソケット(トネ(TONE) ソケット(6角) HP4S-19 差込角12.7mm(1/2") 二面幅19mm)

- エマーソン(Emerson) 車用(乗用車) ジャッキスタンド 3t

- ペーパータオル

- アーレンキー(六角レンチ) 4mm と 6mm+メガネレンチ

- キタコ (KITACO) グリスセットA シリコングリス&ブレーキバッドグリス 各1本 AZ969-001

- ダイヤモンドやすり
後輪の取り外し #
使い捨ての手袋をして、汚れに備える。
前後のブレーキロックをかける。
後輪のホイールナットを普通のソケットレンチ用ハンドル(※)で緩め(緩めるだけ)、しかる後にルーフを手で押し車体を傾け、ジャッキスタンドを後輪前の横に渡されたフレームに足で押して入れて後輪を浮かせる。ジャッキスタンドをかけてからホイールナットを緩めようとするとブレーキロックをかけていてもタイヤが回ってしまうため、着地している間に緩めだけはやっておく。
※: トルクレンチを緩めに使ってはいけない

後輪を浮かせるために、ジャッキスタンドの高さを調整する必要があるかもしれない。
緩めたホイールナットを取り去り、後輪のホイールを外す。
後ろのブレーキロックを外す。これを忘れるとブレーキキャリパーが外れない!と騒ぐことになる笑。
ブレーキキャリパーの取り外し #
ペーパータオルを手に届くところに1枚取っておく。
まず外側を向いているブレーキキャリパーにある2本のピン(写真A、B)(4mmの六角穴付き)を六角レンチで緩める(緩めるだけ)。キャリパーを外してからだと力をかけにくいため、外す前に緩めだけはやっておく。

固くて六角レンチでは緩められない場合は、メガネレンチを六角レンチに通して延長する。

続いて、外側からは見えない、裏側にある2本のボルト(写真C、D)(6mmの六角穴付き)を六角レンチで外す。スプリングワッシャーが入っているので紛失注意。
こちらも固くて六角レンチでは緩められない場合は、メガネレンチを六角レンチに通して延長する。

ブレーキキャリパーが外れるのでブレーキキャリパーをシャーシに固定していたプレートを手前に引き、スライドピンを抜き取る。抜いたスライドピンをペーパータオルで拭浄する。

緩めた2本のピン(写真A、B)を六角レンチで最後まで緩めて外す。ブレーキパッドを少しピン(写真A、B)側に押し込まないと外れないかもしれない。

ピン(写真A、B)を抜いたら、2枚のブレーキパッドはそのまま手で外れるので外し、ピンとブレーキパッドをペーパータオルなどで拭浄する。
どちらのパッドがどちら側に付けられていたかは、ブレーキパッド裏側の傷を見ると判別できる。

ブレーキパッドの面取り #
取り外したブレーキパッドをAPtrikes125のフロアにパッド側を上にして置き、片手の掌で押さえ付ける。

もう一方の手でダイヤモンドやすりを使ってブレーキパッドの面取りする。

この作業は結構な長丁場なので、椅子に座ってじっくりやるといい。
ダイヤモンドやすりは縦に使うとやりやすい。
面取りはパッドの左右端の辺をおおよそ45度の角度で削り取る。
削る量はパッドが完全な台形になってもいいぐらいだが、やすりを縦に使う限りはパッドが固定されているプレートが邪魔してそんなに深くまで削れない。
これを2枚のブレーキパッドに対して行なう。
ブレーキパッドがすり減ってこの面取り部分がなくなると、またブレーキ鳴きし始める可能性が高い。
グリスアップ #
まず、ブレーキキャリパーをシャーシに固定していたプレートに付いているスライドピンにシリコングリスを塗る。

グリスアップが終わったら、それを所定の位置にはめ込む。

ブレーキパッドにパッドグリスを塗る。塗るのは、パッドの裏側の鉄板部分にピストンやブレーキキャリパーの当たった跡の部分。そして、ブレーキキャリパー奥側にある板バネに当たる部分。


ブレーキパッドをキャリパーに戻す #
グリスアップの終わったブレーキパッドを、まずピストンに当たる側からキャリパー内に戻す。

抜いたピン(写真A、B)の1本を手の届くところに用意。

続いて、外側のブレーキパッドの戻し。この際、板バネがスリットで三分割されているうちの一番外側の列に当たるように戻す。

戻した2枚のブレーキパッドを板バネ側に押し込むとキャリパーとブレーキパッドのネジ穴が揃うので、そこで用意しておいたピン(写真A、B)を1本差し込んでブレーキパッドを仮に固定する。
ピン(写真A、B)のグリスアップとブレーキパッドの固定 #
残りの1本のピン(写真A、B)にシリコングリスを塗る。

戻した2枚のブレーキパッドを板バネ側に押し込んでネジ穴を揃え、グリスアップしたピン(写真A、B)を差し込む。
グリスアップがまだの方の1本目のピン(写真A、B)を抜き取り、シリコングリスでグリスアップしてまた戻す。

最後に六角レンチでピン(写真A、B)を最後まで締めてブレーキパッドの固定を完了させる。
組み立て #
処理の終わったブレーキキャリパーを2本のボルト(写真C、D)を使って元の位置に固定する。
固くて六角レンチでは緩められず、メガネレンチを六角レンチに通して延長して緩めた場合は、締めるときも延長して十分な締め付けトルクで締める。
後ろのブレーキロックをかける。
タイヤをはめてホイールナットを手で締め込み、さらにトルクレンチで上下、左右といった感じで十字を描くような順番で締められるところまで締める。
ルーフを手で押し車体を傾け、ジャッキスタンドを片足で手前に引いて外に出し、タイヤを着地させる。
ホイールナットは、上下、左右といった感じで十字を描く順に少しずつ締めていく。規定トルクまで締めて終わり。
締め付けトルクは108N.m(11kgf.m)が推奨されていることもあったが、その締め付けトルクでアルミホイールが割れるケースが発生。
大体69〜79N.m(7〜8kgf.m)程度で十分ではないか、ということになっている。
そもそも中国製の精度の低いパーツが使われているので、トルクレンチを使ったところで当てにならないという話もある。