ワイパーコントローラーの製作

ワイパーコントローラーの製作 #

APtrikes125のワイパーはオンオフしかなく、オンにすると全開で動作するため策を講じたくなる。

下掲の記事でやっているように、操作しにくい場所にあるワイパースイッチを操作しやすい場所に移設する策が一つ。

image

市販の間欠ワイパーキットを取り付ける策が一つ。

筆者はキルスイッチでワイパーを動かせるようにして一定の満足を得たが、スイッチへいつでも手が届くようになったとはいえ、キルスイッチを操作するときに注意が散漫になっていると感じたため、運転に集中するためにワイパーコントローラーを自作した。

image
image

市販品を買わなかったのは、筆者手持ちの部材・廃材で作れる見通しがあったためだ。

手間賃を無視すれば、一から部材を集めても市販品より一応安く上がる。

仕組みはコムエンタープライズの間欠ワイパーキットと同じで、ワイパースイッチを一瞬入れてすぐ切る動作を機械に代わりにやらせるだけのもの。

使った部材の合計金額の概算を出した。普通の家庭にはないであろう、必要な半田付け関係の費用は加えていない。

品目価格
Raspberry Pi Pico950円
リレーモジュール592円
ロータリーエンコーダ930円
LED+抵抗232円
USBカーチャージャー110円
カメラケース110円
PPシート110円
187型平型端子セット245円
110型コネクタセット266円
ツマミ510円
配線材500円程度
結束バンド110円
1cm x 1cm程度の角材110円
合計4,775円

コムエンタープライズの間欠ワイパーキットが6,100円なので、身も蓋もないがこの価格差なら買った方が得だ。

しかし、難度が低い一方実用的な電子工作となり、一部の人にとって興味深い経験になるかもしれないので、このような記事公開に及んだ。

Amazonに頼るために暗に送料が乗ってくる、1個単位で買えない、そもそもこの数年でAmazonでの販売額が値上がりしていることなどで費用が嵩んでいるため、電子部品店へのアクセスのいい場所に住んでいる、AliExpressが利用できるなどの条件が整えばもう少し安く上げることは可能だ。

必要なもの #

  • Raspberry Pi Pico ラズベリーパイピコ マイコンRP2040(Arm Cortex-M0+デュアルコア@133MHz (1個)
  • KKHMF 3個 5V 1チャンネルリレーモジュール 高低レベル トリガー 「国内配送」
  • uxcell 360度ロータリーエンコーダ 7ピン 20桁 スイッチ付きエンコーダコード シャフト高さ20mm 2個入り

セリアの2.1A出力USBカーチャージャー

image

セリアのコンパクトカメラケース(ファブリック)

image
  • キタコ(KITACO) ブレーキスイッチ用端子セット(187型/2セット) 汎用 0900-755-01050
  • キタコ(KITACO) コネクターセット 110型/2極(オス/メス)/1セット 汎用 0900-755-02000
  • 配線材
  • 結束バンド
  • 1cm x 1cm程度の角材

カーチャージャー。100円で買え、小型で分解しやすい簡素なカーチャージャーが買えるセリアのものを選んだ。

店舗によるかもしれないが、ダイソーにも100円で買えるカーチャージャーがある。こちらも恐らく同じものだ。

image

電源はRaspberry Pi Picoに与える+5V(USB電源と同じ)であるため、Raspberry Pi PicoにUSBケーブルを繋ぐ形で構わない場合はカーチャージャーや電源関係の配線は必要ない。

底面のプラ部分が緑色のロータリーエンコーダは少し安く買えるが、仕様が違うので使えない点に注意。

Raspberry Pi Picoを選定した理由 #

ワイパーの間欠動作はRaspberry Pi Picoというマイコンボードが担っている。

image

Raspberry Pi Picoはファームウェアの書き込みのために何も道具を必要としないメリットがあるためだ。

Micro USBケーブルをRaspberry Pi Picoにつなぎ、Raspberry Pi Picoの基板の上に一つだけあるBOOTSELボタンを押しながらPCに接続すると……。

image

USBメモリのようにディスク領域がマウントされる。

image

そこにファームウェアファイルをドラッグ&ドロップするとそのファームウェアがRaspberry Pi Picoに書き込まれ、自動的にRaspberry Pi Picoが再起動し、書き込んだファームウェアに則って動作するようになるのだ。

製作記事として公開し、再現してもらうことを想定して作り始めたため、ファームウェアが配布しやすい、書き込みやすいRaspberry Pi Picoを選んだというわけだ。

安く上げるなら今回のような初歩的なタスクであればATtiny13aといった100円マイコン(以前は50円)が候補に挙がるが、ファームウェアの書き込みに専用の道具を要し、また専用のソフトウェアも必要なため、今回のようなケースにおいては選外となった。

image

Raspberry Pi Picoへのファームウェア書き込み #

Raspberry Pi Picoに書き込む間欠ワイパー用のファームウェアが以下だ。

ワイパーコントローラー・ファームウェアダウンロード: http://hitoriblog.com/zip/wiper_controller/aptrikes125_wiper_controller_firmware.zip

zipファイルなので解凍して使う。0.5secから0.8secまで何種類も入っているが、これはワイパースイッチのオン時間別になっている。

筆者の車両では0.6secのものがちょうどよく、それを調子良く使っているが、個体差がある可能性があるので、複数種用意した。

image

Micro USBケーブルをPC側に接続。

image

BOOTSELボタンを押しながらMicro USBケーブルに接続。

image

すると、PCにRaspberry Pi PicoがUSBメモリ「RPI-RP2」として見えるようになるので、そこに解凍したfirmware.uf2をドラッグ&ドロップする。

image

すると、USBメモリとして見えていたRaspberry Pi Picoが強制的に切断されたようになる。

これは、ファームウェアの書き込みを終えたRaspberry Pi Picoが自動的に再起動したためだ。

その瞬間から、このRaspberry Pi Picoはワイパーコントローラ基板として機能し始めている。

これでRaspberry Pi Picoへのファームウェア書き込みは完了だ。

何ともあっけない。

蛇足ながら50MHzで動かしているため、Raspberry Pi Pico単体の消費電力は11mA程度のはずだ。

動作詳細 #

書き込んだファームウェアがやることは以下のようなことだ。

  • ダイヤルスイッチ時計回りで間欠間隔短く、反時計回りで間欠間隔長く
  • ダイヤルスイッチ一刻みが認識されるとLEDが短く1回点滅
  • 間欠間隔最小3秒〜最長15秒に設定可能
  • 初期状態の間欠時間は7.5秒
  • ダイヤルスイッチ時計回りで3秒以下に到達するとLEDが3回点滅して全開動作へ(従前のスイッチオン状態)
  • ダイヤルスイッチ反時計回りで15秒に到達するとLEDが3回点滅して終端到達を告知
  • ダイヤルスイッチ押し込みで動作開始。開始時点でとりあえず1回ワイパー動作
  • 動作中はLED点灯
  • ワイパー動作時にLEDが短く消灯
  • 動作中にダイヤルスイッチ押し込みでLED消灯し、動作終了(トグル動作)
  • ダイヤルスイッチ操作中は間欠時間のカウントダウンが停止(ダイヤルスイッチを左右に回している間はワイパーが動かない)
  • 電源が切れるとその時点の設定はリセットされ、間欠時間7.5秒からスタート

USBカーチャージャーを分解する #

APtrikes125の電源電圧12VをRaspberry Pi Picoへの供給電圧5Vに下げるため、セリアのUSBカーチャージャー(110円)を利用する。

前出の通り電源はRaspberry Pi Picoに与える+5V(USB電源と同じ)であるため、Raspberry Pi PicoにUSBケーブルを繋ぐ形で構わない場合はこの作業は不要だ。

image

メーター裏の空きACC電源に繋ぐため、USBカーチャージャーはそのまま利用するのではなく、分解して中身だけ使う。

側面のアース端子の穴からこじると簡単に開く。爪すらもなく、ただダボが嵌っているだけだ。

image

取り出した中身が以下。

image

ここから端子の金属をもぎ取って小型化する。

image

以下の部分に半田付けして12V→5Vコンバータとして使うわけだ。

image

LEDの加工 #

表示器として使うLEDの加工をする。LEDをそのままRaspberry Pi Picoに接続すると、電流過多で焼けてしまう。

抵抗を挟む必要がある。

上で紹介している「エルパ (ELPA) LED 電球 LED電球 照明 φ5mm グリーン 5個 HK-LED5H(G)」は親切にも抵抗がセットになっている。

LEDの足の長い方が+極(アノード)、短い方が-極(カソード)となっている。

image

それを以下のように加工する。

+極(アノード)側にオレンジ色の配線、-極(カソード)側に黒い配線を使用することにした。オレンジ色の配線側には、抵抗を間に挟む。

image

半田付け部分を熱収縮チューブで保護して以下のようにした。熱収縮チューブがなければテープなどを巻いておくといいだろう。

image

配線 #

配線の実体図が以下だ。クリックで拡大できる。

ACC電源への配線、ワイパースイッチへの配線にはそれぞれ0.75SQのダブルコードを使用しており、50cm程度の長さにした。

image

電源をRaspberry Pi PicoにUSB経由で与える場合は、カーチャージャーへの配線が不要だ。Raspberry Pi PicoにUSBケーブルを挿すための余白を設けるためにPPシート上のレイアウト変更が必要になる点に注意。

image

これをダイソーのPPシート上に配置し、結束バンドで固定している。

image

ケースの表側はロータリーエンコーダとLEDを穴を開けて取り付け。ロータリーエンコーダはユニバーサル基板に取り付けて補強している。(取り付けているだけ)

image

ケースの裏側はACC電源に繋ぐための配線、ワイパースイッチへ繋ぐための配線を通すための穴を開けてある。

image

リレーモジュールのジャンパースイッチはHとLの位置を選べるが、設定すべきはHの方だ。

image

これに加え、APtrikes125の車体に固定するための穴開けをすることになるが、現物合わせをするためまだ開けない。

image

取り付け #

ワイパースイッチを外した後の直径20mmの穴に取り付けることを想定している。

そこに取り付けるために、1cm x 1cmの角材を4cm程度に切ったものの中央に20mm程度の間隔で2つの穴を開けたものを用意。

image

こういう形状でありさえすれば、素材は何でもOK。

ワイパースイッチを取り外した穴の中央にマスキングテープを貼る。

image

そこに作ったワイパーコントローラーを当てがい、マスキングテープを移す。

image
image

そこに2cm間隔ぐらいで穴を二つ開ける。

image

150mmの結束バンドを用意。

image

用意した木片と、ワイパーコントローラーのケースに開けた穴を結束バンドで縫うようにして、下掲の写真のような形に。

image

ワイパーコントローラーのケースから出した電源ケーブルとワイパースイッチ用のケーブル、そして結束バンドを通した木片をワイパースイッチ跡の穴に突っ込む。

image

木片から出した結束バンドの先をケース内に戻し、締め上げてケースの固定完了。

image

ケースのファスナーのスライダーの持ち手はビビリ音の元なので取っておく。

image

ヘッドライトユニットを外してメーター裏の配線作業。

ワイパーコントローラーのワイパースイッチ側の配線処理。

配線の先端に中サイズ(187型)の平型端子を圧着。

image
  • キタコ(KITACO) ブレーキスイッチ用端子セット(187型/2セット) 汎用 0900-755-01050
  • アイウィス(IWISS) 同時圧着ペンチ ラチェット式 ファストン端子 0.5-1.5mm2中型端子対応 SN-48B

ワイパースイッチの裏から抜き取った配線。

image

筆者はここに下掲の記事でやったキルスイッチからの配線と、ワイパーコントローラーからの配線を両方差し込んだ。

極性はないので、どちらをどちらにつないでもOKだ。

image

ワイパースイッチ裏から抜いた配線に付いているコネクタは、厚みのある端子を差し込む作りになっているので、平型端子を二つ差し込んでちょうどぐらいなのだ。

キルスイッチに繋ぎ直す改造をやっていない場合は、抜けにくくなるよう平型端子をくの字に曲げて差し込む。

コネクタが抜けないようにビニールテープを巻いておく。

image

ACC電源に繋ぐ方の配線処理。こちらは110型端子を取り付け、メーター裏の空きACC電源に繋ぐ。

image
  • キタコ(KITACO) コネクターセット 110型/2極(オス/メス)/1セット 汎用 0900-755-02000
  • アイウィス(IWISS) 同時圧着ペンチ ラチェット式 ファストン端子 0.5-1.5mm2中型端子対応 SN-48B

空きACC電源については以下の記事で紹介しているので参照のこと。

筆者は機器を数珠繋ぎにできるよう二股にし、110型2極コネクタのオス、メスを両方取り付けている。これも詳しくは上記の記事で解説している。

image

これを空きACC電源につないで作業完了だ。

配線はフレームに固定してステアリングに巻き込まれないように整理しておく。

image

取り付けた状態・外観 #

理想はダイヤルスイッチだけが運転席側に出ている状態だろうが、直径20mmの穴に軸の直径7mmのロータリーエンコーダを取り付けるのはなかなか難しく、3Dプリンターで解決してしまいそうになるため、このような形にしてみた。

新しく穴を開けても構わないなら難度は下がる。アレンジに挑戦してみてほしい。

image
image
image

おまけ #

ロータリーエンコーダに取り付けたツマミの3Dプリンター用データ。2ピースにして色を変えられるようにした。手抜きで接着前提。

緩い場合は固定にM3 x 10mmのネジが必要だ。手前の方を3mmのドリルでさらう必要があるかもしれない。