デジタルマルチメーターで給油タイミング管理

デジタルマルチメーターで給油タイミング管理 #

APtrikes125は燃料計に問題を抱えており、残量表示が信用ならない。

信用ならない燃料計の残量表示を頼りにしていると、道端でガス欠の憂き目に遭ってしまう可能性がある。

燃料計の持つ問題の抜本的な解決方法もある。

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それ以外に、平均燃費を調べた上で給油時からの走行距離を把握して、給油管理をする方法もある。以下に紹介する方法は、自転車用のサイクルコンピュータをAPtrikes125に取り付け、トリップメーター機能を使い給油管理する方法だ。

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筆者はこれで管理して給油から200km走行を過ぎた辺りで給油としていて、問題が出たことはない。

自転車用のサイクルコンピュータは外部に電源を必要とせず、車体側の電装をいじらずに取り付けが済み、取り付けの精神的ハードルが低いメリットがある。国産の信頼性の高い製品でも安価なため、経済的な負担も軽くて済む。

自転車用のサイクルコンピュータの欠点は、夜間見えないことだ。バックライト付きの機種もあるが、電源がボタン電池になるため常時点灯は現実的でなく、数秒点灯後に消えてしまう仕様のものが多い。

こちらの機種 のように、バックライト常時点灯が可能な機種もあるが、電源はボタン電池CR2032であるため、電源回路を工夫しないと常時点灯が実用にならない

バイク用のデジタルマルチメーターの利用 #

それ以外の選択肢として挙げられるのがバイク用のデジタルマルチメーターを利用すること。

デジタルマルチメーターは、以下のような機能を持っていることが多い。

  • 速度計
  • タコメーター
  • オドメーター
  • トリップメーター
  • 燃料計
  • シフトインジケーター
  • ハイビームインジケーター
  • ウインカーインジケーター
  • エンジン警告灯

給油管理には、この中のトリップメーターの機能を役立たせられる。

給油時にリセットして、そこからの走行距離をモニタリングするわけだ。

バイク用なので表示が自発光。夜間でも見える。12V電源で動くため、ACC電源に接続すればOK。

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デジタルマルチメーターにはいろいろな製品が存在するが、筆者は純正のメーターはそのままにしておき、置き換えにはせず、追加で取り付けたかったため、できるだけ邪魔にならない小型のものを選んだ。

そんなニーズには、056デジタルマルチメーターがうってつけだろう。筆者が買ったのは、下記リンクの「Gauge Kit D」だ。本体取り付け用のステーまでセットになっている。

オフ車のメーターのような細身の本製品は、追加で取り付けても邪魔にならない。

  • ユニバーサルデジタルオートバイスピードメーターオイルゲージタコメーター走行距離計計器クラスターウインカーライトインジケーターセンサーセット付き

国内にも同型のデジタルマルチメーターが売っているが……。

  • ユニバーサルバイスピードメータータコメーターオイルゲージHDスクリーンデジタルメーター計器クラスターターンシグナルライト(C)耐久性

本体固定用のステーが足りないのでAliExpressで買った方がいい。本体取り付け用のステーは、画像検索をしてみたが国内では扱いがないようだ。

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この本体取り付け用ステーがないと、本体の取り付けには結構工夫が必要になると思われる。

センサー、磁石の取り付け #

この056デジタルマルチメーターの回転数/スピードセンサーは、自転車サイクルコンピュータ同様磁気式。(ホールセンサー)

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ホイール側に磁石を設置。それをフロントフォーク側に設置した磁気センサーで検知する仕組みだ。

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機械式の純正メーターに手を付けずに、追加で取り付けられることを意味する。

APtrikes125のフロントフォークのブレーキキャリパー側には、無使用のM6のネジ穴が開いている。

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056デジタルマルチメーターの磁気センサーを固定するステーは、ここに取り付け可能。

取り付け用ステーは両サイドに大径の穴が開いており、M6ボルトで取り付けようとするとボルトの頭がスッポ抜けてしまうため、直径22mmのワッシャーを使った。

フロントフォークが鉄製であるため、取り付けに使うボルトやワッシャーはステンレスにはせず、鉄製のものを選択。

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磁石はブレーキディスクを固定する六角穴付きボルトの六角穴を使って設置する。ブレーキディスクを固定するボルトは3本。

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このボルトの六角穴の中にネオジム磁石を落とし込んで設置することになるが、製品に付属のネオジム磁石は二つで一つ足りないため、ダイソーで小径の「超強力マグネットミニ」を購入。それで代用した。

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取り出しやすさから、磁石は六角穴に立てて入れたが、これで問題なかった。

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当初は13mmの方をボルトの上に被せるように吸着させるつもりだったが、実際にやってみたところ吸着力が弱かったため不採用とした。

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磁石の数は1個〜9個の範囲で設定できるため、1個でよければ磁石を買い足す必要はない。3個にしておくと速度表示のレスポンスがよくなると予想されるため、筆者は3本のボルトすべてに磁石を仕込んでおくことにした。2個だと不等ピッチになってしまい、不都合が生じそうで避けた。

磁気センサーは、ステアリングヘッドパイプの辺りから下に落としていく。ケーブルの長さは足りているので、延長の必要はない。

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磁気センサーは取り付け用ステーにワッシャーと座金でステーを両側から挟むように固定する。

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つまり、磁気センサーの突き出し量は調整可能というわけだ。

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取り付け後の様子は以下の写真のようになる。ステーの長穴の方がセンサー側、丸穴の方がフロントフォーク側となる。センサーが磁石を仕込んだボルトの円周上に沿う位置になるよう調整する。

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磁気センサーと、磁石とのクリアランスは以下の写真のように調整した。ナット側で突き出し量を微調整するのは面倒だが、ステーは手で簡単に曲げられるので、最後はステーを手で押し引きして曲げて微調整するといいかもしれない。

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磁気センサーからのケーブルは、ブレーキホースと結束バンドでまとめておく。

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本体の取り付け #

本体は、付属の取り付け用ステーで取り付ける。

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角度調整が可能な作りになっている。

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ステーは、ハンドルクランプ左右の手前側のボルトと共締めして固定する。

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本体は手前のゴムブッシュ側に固定するが、筆者の手元に届いたものには、ここの固定に必要なM6のナットとワッシャーが入っていなかったため、ストックから出して使った。(ワッシャーは直径22mmのものを使用)

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筆者はハンドルをセパレートハンドルに交換しており、デジタルマルチメーターを水平に近づけようとすると干渉する。干渉を避けるために、写真のように立った角度で取り付けざるを得なかった。

しかし、純正メーターと比較しかなり手前側にあるため、上から見下ろすように見ることになり、このように角度が付いていると視認性が少々低くなってしまう。

可能なら水平に近い角度で取り付けたい。

そこで、メーターがセパレートハンドルと干渉しないよう取り付け位置を手前側に40mmオフセットするためのアダプタを3Dプリンターで作った。M6ナットが追加で2つ必要になる。

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ついでに、ゴムブーツがすぐ外れてきてしまうため、根元を押さえつけるためのパーツも3Dプリンターで作った。もともとネジ穴が開いているため、それをこのパーツの固定に使った。固定にはストックの小さい木ネジを使った。

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3Dプリンター用のデータは以下で公開している。

取り付け位置を手前側に40mmオフセットしたため、メーターを水平に固定できるようになった。

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電源ケーブルの作成 #

筆者はこのデジタルマルチメーターをトリップメーターとしてしか使わないので、磁気センサーのほかは+12Vの電源しか繋がない。

電源供給用のケーブルを作成することになる。必要なのはまず110型9極カプラ。

  • KWY カプラー端子 2極 3極 4極 6極 9極 自動車用・バイク用・電装品汎用 電線コネクタ オス・メス各5個+2.8mm接触端子45個セット 電装 汎用品 圧着 5組 (9極コネクター+端子 5組)…

メーター側の9極カプラの電源ピンは以下の通りだ。

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用意した9極カプラは以下のように配線する。

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電源はヘッドライト裏の空きACC電源などから取る。こちらは110型2極カプラだ。

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  • エーモン(amon) カプラー2極 (ロック付) 110型 3セット適合コードサイズ AV(S)0.5∼1.25sq 2973

カプラの接続 #

説明するまでもないかもしれないが……。

本体の3極カプラには磁気センサーからの3極カプラを接続。

本体の9極カプラには、用意した電源ピンを備えた9極カプラを接続。

残る本体の6極カプラ(他と同じく110型)はシフトインジケーター用なので、今回は利用しない。

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設定 #

キーオフ(電源オフ)の状態で本体左のボタンを押しっぱなしにし、キーオンにして電源を投入。ボタン押しっぱなしで5秒ほど待っていると表示が「SETP」となり、設定モードに入れる。

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設定の変更はボタン短押し、次の設定への移行はボタン長押し、というのが設定モードでの基本操作となる。つまり、1ボタンで設定を済ませられる作りになっている。

最後のエンジンストローク設定まで進み、それを長押しで終了させ通常モードに戻らないと、それまで変更したすべての設定が保存されないため注意。途中でタイムアウトして設定から抜けてしまっても保存されない。

1. 車速センサーの磁石数設定 #

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  • インターフェース “E-2” が点滅する。 (工場設定は磁石数2) 磁石数設定可能範囲は1〜9
  • ボタンを短押しすると増加し 、長押しすると保存して次のパラメータ設定に切り替わる

設置した磁石数に応じて設定する。筆者は3つ設置したため、3に設定した。

2. タイヤ周長設定 #

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  • インターフェースが “e-1902” の点滅にジャンプする。(工場設定のタイヤ周長は1902mm)
  • ボタンを短押しすると1増加し 、長押しすると桁を移動する
  • 4桁目を設定した後、ボタンを長押しすると次のパラメータ設定に切り替わる

APtrikes125の純正フロントタイヤの周長は1620mmなので、そのように設定してある。

3. エンジンストローク設定 #

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  • インターフェース “1P” が点滅する(工場設定)、ボタンを短押しすると1-4で切り替わる
  • 上記のパラメータ設定が完了した後、ボタンを長押しするとパラメータ設定インターフェースを終了する
  • パラメータ設定インターフェースは、20秒間操作がないと自動的に終了し、作業インターフェースに戻る

取り扱い説明書には「エンジンストローク設定」となっているが、気筒数設定ではないかと思われる。タコメーターに影響する設定項目なので、未使用の今回は検証できていないが、単気筒ゆえ1Pに設定してある。

実際より回転数が高く表示される場合は気筒数を多く設定し、実際より回転数が低く表示される場合は気筒数を少なく設定するとよいのではないだろうか。

使い方 #

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  • ボタン短押しでオドメーターとトリップメーターの切り替え
  • トリップメーター時にボタン長押しでトリップメーターのリセット

燃料を給油したらボタン長押しでリセットして、給油からの走行距離を管理する。

速度センサーとして機能する磁気センサーしか取り付けていないので、この状態でこの056デジタルマルチメーターは……。

  • スピードメーター
  • オドメーター(総走行距離)
  • トリップメーター(区間走行距離)
  • 電圧計

として機能する。最後の電圧計というのは、燃料センサーを接続していないと燃料センサーのゲージが自動的に電圧計として機能するためだ。

左端が8V、右端が16Vで、9Vから16Vの8V分を5段階で示すため、以下のような表示になると考えられる。

段階(点灯数)点灯開始電圧電圧の範囲
18.0V8.0V 〜 9.6V
29.6V9.6V 〜 11.2V
311.2V11.2V 〜 12.8V
412.8V12.8V 〜 14.4V
514.4V14.4V 〜 16.0V
  • 1つ点灯(8.0V〜): バッテリー上がり、または電圧不足の状態
  • 3つ点灯(11.2V〜): 一般的な12Vバッテリーの場合、少し電圧が低め〜標準的な状態
  • 4つ点灯(12.8V〜): バッテリーが満充電に近い、あるいは充電中の良好な状態
  • 5つ点灯(14.4V〜): 充電電圧がしっかりかかっている、または高電圧の状態(16Vまで)を指す

APtrikes125の燃料センサーは、満空逆転したYAMAHA仕様で一般的でない。 本デジタルマルチメーターには燃料センサーの設定がないため適合しないはずだ。

技術資料 #

今回は056デジタルマルチメーターをスピードメーター、トリップメーターとしてしか設定していないが、他の機能も使いたい場合は以下の情報ソースが役に立つ。