サイドミラーのアームを作り直す #
APtrikes125のサイドミラーは首が座っておらず、振動や風圧でひとりでに角度が変わってしまい、信号待ちのたびに角度の修正に迫られる事態になりがちだ。

このミラー問題に対し、オーナー側では関節部にすべり止めを挟んだり、ミラー部分をダイハツ ハイゼット向けの互換ミラー(純正サイドミラーと近い構造で、ミラー部から生えているネジが長い)に交換し、スプリングを強化したりと、おのおの対策をしているようだ。
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しかし、ボディーに接する土台となるパーツの強度が低く、強化パーツで締め込みを強くすると土台パーツがそれに耐えられず破損に至り、完全といえる対策がないように思える。

純正サイドミラーの使用を諦め、全然別のミラーを取り付けることで問題解決を図るケースが多いが、純正サイドミラーには折り畳みが可能であるというメリットがあり、特に都市圏においてはバイク用の駐輪場の利用でその特徴が欠かせない。

都市圏ではバイク用の駐輪場を利用することによる経済的なメリットはとても大きい。それが存在意義になるぐらいだ。
筆者は幅1mの月極駐輪場を契約しており、隣の区画への迷惑を避けるため、折り畳み可能なミラーの使用は運用のための必須条件となっている。
Ninja 250用のミラーは折り畳み可能で、中国製の安い互換品が出回っており、なおかつ無加工でポン付けできるという素晴らしい特徴を持ち、感銘を受けた筆者も取り付けてみたが、アームがアルミ製で純正サイドミラーより剛性が高く、振動が少なく、角度が勝手に変わってしまうこともなく、非常に優秀だった。

- 関連記事: バックミラーをNinja 250用に交換
すぐ角度が変わってしまうサイドミラーのことを運転中いつも気にしていたことが嘘のようだった。その点ではおすすめできるミラーだ。
ただ、軽バン用のミラーのように縦長で、リアフェンダーまで見え、バックや車庫入れに大変便利な純正サイドミラーと異なり、左右の視界こそ純正サイドミラーより広いものの、上下の視野が狭いのがNinja 250用のミラーの欠点で、cm単位のシビアな車庫入れを余儀なくされる筆者は不便を感じていた。
純正サイドミラーの補完という方向性においては、これまで見た中ではBIKE SHOP BIGMOUSEが実施していた、ハイゼット向けの互換ミラーを土台パーツごと取り付けてしまうというカスタムが最も有力な手法のように思えた。
みなさんの情報からパクらせてもらいました。
— AP TRIKES125 @BIKE SHOP BIGMOUSE (@trikes125) February 20, 2024
Amazonで売ってるDAIHATSU用社外品ミラー。
APの純正ミラーにステーはそのまま使用でミラー部だけ交換で幸せになると聞いて交換しましたがテンションスプリングが強いのか純正がクソなのか純正ミラーステーが破損しました。(笑) pic.twitter.com/uzsYH7IHPW
脆弱な土台パーツの使用を回避するわけだ。
筆者のアプローチ #
筆者は純正サイドミラーのミラー部分流用を前提とし、サイドミラーのアームの部分のパーツを3Dプリンターで新規に作成するという問題解決のアプローチを取った。

ポイントは、自由な角度に固定することを意図した純正サイドミラーの球状関節部分と異なり、上下と左右の角度調整用関節を別にすることで強度を持たせるようにしたことだ。

これにより、強い締め込みトルクに耐えるようにした。
もちろん、データ化した以上、破損しても出力し直せば何度でも修理できるのもポイントだ。
パーツの呼称 #
後の説明のためにボディーと接する土台パーツをパーツA、パーツAに取り付けるアームをパーツCと呼ぶ。
また、パーツAと組み合わせるノブをパーツB(短い方)、パーツCと組み合わせるノブをパーツD(長い方)と呼ぶ。

パーツAの向き #

ミラー取り付け面は10度ほど正の傾斜(ハの字)が付いており、それを補正するためにパーツAの円筒形の部分には10度の傾斜が付いている。
円筒形のパーツが斜め下を向くのが正しい向きだ。
ダウンロード #
3Dプリンター用のデータは以下で公開している。
- Reinforced Mirror Arm for APtrikes125 by hitoriblog - Thingiverse
使用フィラメントと出力条件 #
出力方向は、特別な理由がない限り必ずデータ通りにする。
主に強度を考慮して向きを決定している。
筆者はフィラメントの中では比較的柔らかいPETGを使い、インフィル100%で出力。
パーツAとパーツCはサポートが必要だが、パーツBとパーツDにはサポートは不要だ。
- ELEGOO 高速 PETG フィラメント 1.75mm 黒色 印刷速度30-600mm/s対応 RAPID PETG フィラメント 3D プリンター用フィラメント 寸法精度±0.02mm ほとんどのFDMプリンターに対応 (1KG/スプール 2.2 lbs)
パーツの強度がミラーの振動の大小に関係してくるため、できるだけ強度のある、剛性の高いものが望ましい。フィラーにカーボンを使用したフィラメントがいいかもしれない。
- iSANGHU カーボンファイバー PETG フィラメント 1.75 +/-0.02mm、アップグレードされたブラック PETG CF 3D プリンター フィラメント、軽量高強度、良好な層密着性、湿気なし、ほとんどの FDM 3D プリンター用 3D フィラメント 1KG
- IEMAI PETG カーボンファイバーフィラメント 1.75mm、マットブラック PETG-CF、耐熱性、高強度、高剛性 3D プリンターフィラメント、1kg スプール、複雑なモデルや機能部品向けに設計
普通のPETGでもインフィル100%にすれば実用強度が出ているので、出力難度や機材側の都合(カーボン系のフィラメントはノズルの硬度を問う)を考慮すると通常のPETGで十分だとは考えている。
パーツの仕上げ #
パーツAは円筒形の突起の、サポートが付く部分が盛り上がって、パーツCの円筒形のくぼみに入らないかもしれない。その場合は、やすりなどで削って整形する。

パーツCは円筒形の窪みを下にして出力するため、窪みのエッジが内側にはみだしてパーツAが入らなくなっている可能性が高いので、バリ取りリーマーのような道具でエッジを削り、面取り状態にしておく。

- UID バリ取り回転リーマー(バリ取りバー) ブレード3本付(鉄鋼・アルミ・銅・板金・プラスチックのバリ取り用 2本、ステンレスのバリ取り用 1本) NO.846
ボルト穴はあえて寸法ぴったりの6mmで作っているため、3Dプリンターで出力すると少し小さくなるはずだ。
これはボルト穴にガタを作りたくなかったがゆえの措置。
6mmのドリルでさらって寸法ぴったりに仕上げる。
必要なもの #
- M6六角ボルト x 30mm x 2本
- M6ナット x 2個
- EVAすべり止めマットなどの滑り止め素材(2mm厚以内)
事前準備 #
純正サイドミラーの以下のパーツは不要になるので取り外す。残ったミラー部分のみ使用する。

すべり止めの加工とセット #
用意したすべり止め素材を直径23mmの円形に切り抜き、センターに直径6mm程度の穴を開ける。

これを、純正サイドミラーのミラー部のへこんだドーム状の部分にあてがう。

すべり止めになるのはもちろん、PETGよりも柔らかいミラー部の樹脂を保護する意味もある。やわらかいすべり止めを挟まないと、あっという間に削れてしまう。
もう一枚はパーツCの円筒形のへこみ部分にはめ込む。

パーツAにナットを埋め込む #
パーツAの中央の表からM6ボルトを差し込み、裏からはM6ナットを六角穴に押し込む。

M6ボルトを締め込み、M6ナットを六角穴の奥まで埋め込む。

ノブの組み立て #
パーツBのノブに用意したM6のボルトを埋め込む。
反対側からボルトを締め込んでいき、ナットをノブの中に沈み込ませるのがポイント。
パーツDのノブに用意したM6ナットを埋め込む。
こちらもパーツB同様に、反対側からナットを締め込んで、ノブの中にボルトを沈み込ませる。
組み立て #

ナットを埋め込んだパーツAにパーツCを組み合わせ、パーツBのノブを締め込む。
パーツCに純正サイドミラーのミラー部を差し込み、ボルトを埋め込んだパーツDのノブを締め込む。
インプレッション #

関節が二つに増えていること、インフィル100%で無垢(ムク)状態にしているとはいえ、所詮プラパーツなのでアルミパーツを使ったNinja 250用ミラーのような無振動とはいかないが、純正状態のミラーには劣らない視認性は確保できることを確認した。

使ったすべり止めの素材や締め込みの強さにもよるが、走行中に勝手に角度が変わってしまうこともなく、当初のもくろみに対し、十分な結果が出た。

なお、いつでも手で締め直しができるようにノブを使う形としたが、手で出せる締め付けトルクには限界がある。ノブは使わず、締め込みには道具を使う選択も想定している。
結果に応じて選択していただきたい。


データの使用について #
このプロジェクトをベースに改善していくことも可能だろう。
商用利用は禁止とさせていただくが、改変や改変物の非商用の再配布は自由だ。
データの使用結果には責任は持てないので、自己責任で利用してほしい。