シフトペダルの取り付け

シフトペダルの取り付け #

APtrikes125では左手でシフトレバーを操作する。

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左手はリアブレーキの操作も担当する。

おまけに左手はウインカーの操作まで担当する。

  • シフトレバーの操作
  • リアブレーキの操作
  • ウインカーの操作
  • ハイビームの操作
  • ハザードランプの操作

左手はこの五つを担当するので大変忙しい。

APtrikes125は通常のバイクと異なり前輪1輪、後輪2輪という構成で、リアブレーキの方がかなり効きがいいこともあって、リアブレーキは大変重要だ。

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従って、リアブレーキのレバーには常に手をかけていたい。

それをままならなくするのがハンドルから離れた位置にあるシフトレバーの操作だ。

その一方で、足は何も操作を担当しない。

普通のバイクなら右足がリアブレーキ、左足がシフトペダルを担当するが、APtrikes125においては、それが全部左手に集中してしまっているわけだ。

シフトレバーを操作する間、左手はハンドルから手を離すことになる。

その間リアブレーキが操作できなくなることに加え、トライク特有のシミー現象の発生もこの問題にかかわってくる。

片手運転だとシミー現象が発生しがちなのだ。

シミー現象自体は上記のページで紹介している通りフロントタイヤを自動車のタイヤに交換すると抑止できるというのはあるが、左手を離さずに済めば表立った問題になることはないため、この左手問題がもどかしい。

左足がシフト操作を担当できるようにする #

この問題の解決に光明を見出したのがシフトペダルを取り付ける改造だ。

実現には大きく分けて二通りの方法がある。

リンク式シーソーペダル #

一つは大分の株式会社吉冨産業が出しているフットシフトキット。

価格は、¥75,000(税別)。納期は約2週間。

リンクを介してシフトペダルを前方に移動し、スーパーカブないしハーレーのシーソーペダルのようにシフトアップもシフトダウンも踏み込んで行うことができるようにするものだ。

純正のシフトレバーを残すか残さないかを選ぶことができる。

最近では、高速・低速ギア切り替え、バックギアとペダルが増え、3ペダル式も試作されている模様。

予算さえ合えば理想的なソリューションだ。

話が逸れるがAPtrikes125は4速でもギア比が低く、プロペラシャフトによる伝達方式なのでギア比をいじることができず、最高速が70km/h程度に制約を受けているので、高速・低速ギア切り替えというのが気になるところだ。

シフトレバー寄生型シフトペダル #

もう一つが福島氏考案のシフトレバー寄生型シフトペダル。

これはローコストかつ素人でもシフトペダル取り付けを実現できるという魅力がある代わりに、操作が踵での踏み込み、蹴り上げという特殊なものになるデメリットがある。

筆者はこの方式に感銘を受けて自作した。

自作シフトペダル #

自作したものがこれだ。

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3Dプリンターによる出力品でテストをしていたが、耐久性に問題があったため、ステンレス製に。

筆者がCADでデザインし、misumiのmeviy(メビー)で委託製作した。公開型番にしており、misumiにアカウントを持っていれば、だれでも発注が可能だ。

meviyの検索窓で「公開型番」を指定して検索すると所定のパーツが検索結果に現れるはずだ。

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商用利用は禁止とさせていただく。筆者は一切の利益を取っておらず、結果については責任を負えないので悪しからず。

とはいえ、2023年の3月から使っており、2年以上経過しているが、特に問題は出ていない。

品名公開型番価格
ネジ固定金具MVSHM-3N01050-3BH-X5RHE-L※1,350円
左パーツMVSHM-3N03052-3BH-1LTYH-L※1,760円
右パーツMVSHM-3N03052-3BH-G2HFF-L※2,500円

※単価は出荷日20営業日目を指定した場合。少し高くなるが、3営業日なども指定可能

カバーがなくとも使えるが、ペダルカバーは3Dプリンターで作った。3Dプリンター用のデータは以下で公開している。

3Dプリンターが利用できなければ、100均などで販売されている椅子の足カバーなどを利用するといいのではないだろうか。

組み立てには以下のボルトナットが必要。

  • M5 x 15mm x 3
  • M5ナイロンナット x 3
  • M4ワッシャー x 6
  • M4 x 10mm x 6
  • M4ナイロンナット x 6
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踵での蹴り上げが可能な範囲で、ペダルができるだけ床と近い位置になるよう作ったので、床に着けたつま先を支点にして、シフトアップ時のクラッチミートはジワっとできる。

下面が斜めになっていることには、その意図がある。

シフトペダルを長くするとシフトペダルの位置を高くしなければならないし、デザイン時にはその塩梅を考えた。

一方でシフトダウン時はこの方式の限界でつま先が宙に浮くことになるので、シフトアップよりは細かいニュアンスのシフト操作が苦手だ。

従って、ブリッピングを併用してシフトダウンしやすくし、負担のかからないシフト操作をしている。

もっとも、ブレーキをかけ、コーナーを曲がった後にシフトダウンを行えば、そのときの脱出スピードではブリッピングなしで2速にコトっと入るし、信号待ちでは止まる寸前までにシフトアップ操作で1速を出せばいいので無理に蹴り上げをする必要性は少ない。

このシフトレバー寄生型シフトペダル。シフトレバーの手による操作と異なり、踏んだときに下に押し下げる力がかかっていると思われるので、シフトガイドの利用は必須と考えている。

シフトペダルを取り付けた実感 #

実際に取り付けて感じるのは、ハンドルから手を離さずにいられることの快適さ。

リアブレーキに常に手をかけていられるので安心感があるし、実際に安全性向上に寄与している。

目の前で信号が黄色に変わったとき、リアブレーキ操作と1速出しのシフト操作(※)が忙しいが、シフトペダルがあると操作に余裕が出る。

※: 完全に止まってからだとガタン!とショックが出たり、入りにくくなったりするので、筆者は減速して遠心クラッチが切れた瞬間に1速を出している

左手をハンドルから離さずにおれるので、シミー現象も問題にならない。

右左折時にブリッピングしながらコーナー進入前にシフトダウンをして、バイク気分を味わったりもできる。

いいことばかりだ。

シフトレバーの切断 #

筆者はシフトペダルだけでシフト操作を賄えると踏んで、シフトレバーを切断した。

シフトペダル操作時にシフトレバーの慣性が乗ってきて、シフト操作の細かいニュアンスの邪魔になっていると常々感じるからだ。

結論から言うと切断した方がシフトペダルを快適に使えるようになるが、シフトレバーを活かしたままシフトペダルを同時に使え、徐々に移行できるのが、このシフトレバー寄生型シフトペダルの利点だということは強調しておきたい。

シフトレバーを切断し、シフトペダルのみでの操作にして1年以上経過しているが、特に困った経験はないし、いつでも元に戻せるように予備を買ってはあるが、今後シフトレバーを復活させるつもりもない。

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切断にはディスクグラインダーを使用した。筆者は本体も購入したが、ホームセンターなどで1泊2日500円程度で借りられるので買う必要はない。

ただし、レンタルの場合、切断用の砥石は付いてこないので、別途買っておく必要がある。といっても、ディスクグラインダー用の砥石は500円程度で買えて安い。

つまり、1,000円ほどの予算でシフトレバーの切断は可能ということだ。

危険な工具ではあるので、作業時に目の保護はしておいた方がいい。

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  • SK11 ディスクグラインダー用 切断砥石 PRO ステンレス用 WA30P 105×2.3×15mm

ディスクグラインダーを使ってさえ切断まで体感で1分ぐらいかかったので、手作業による切断はちょっと考えたくないところだ。

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切断用砥石で切断し、切断面が危なくないように研磨用砥石で面取りをした。

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  • ニューレジストン スーパーグリーン #120 SG-4(研磨用砥石)

研磨用砥石はディスクグラインダーといっしょに買ったが、ディスクグラインダーの標準添付品が研磨用砥石なので必要なかった。

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ペダルを取り付けた。

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切り離したシフトレバーがどのぐらいの重さなのか計った。

持った感じかなりズッシリくるが、意外と軽く385gだった。

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車体に取り付けた。

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レバーなし寄生型シフトペダルインプレッション #

シフトレバーの慣性がなくなった分シフトペダルが軽くなり、快適に。カチカチとまではいかないが、フィーリングが小気味よくなり、無駄な動きをしなくなってかなり印象がよくなった。

シフトペダルから伝わる情報量が増え、以前では感じにくかったアソビの部分と、シフト操作が始まる部分の境目が分かるようになり、シフト操作がやりやすくなった。

シフトレバーが付いていたときは、その慣性でアソビの部分が分かりづらかった。

クラッチミートも微妙なニュアンスが出しやすくなった。ジワっと繋ぐことにもシフトレバーの慣性が伴っていたため慎重にやって気疲れしていたが、シフトレバーがなくなってかなり自然に操作できるようになった。

シフトダウンについては、やや慣れるまでに時間を要したが、現在ではほぼどのような状況でもスムーズなシフトダウンが可能となっている。

クラッチ調整 #

シフト操作においては、クラッチ調整が非常に重要だと感じる。

そもそもAPtrikes125のシフト操作がしづらい、ギアが入りづらいという場合はクラッチ調整がなってない可能性があるので、まずそこを見直す。

基本的にスーパーカブのクラッチと調整方法は同じだ。

時計回りにより多く回すとシフト操作が軽くなり、反時計回りに回すとシフト操作が重く、クラッチが滑りづらくなる感じだ。坂が多い地方でAPtrikes125を乗っているオーナーは、ここをあえて渋く調整しているようだ。

サイドカバーとクラッチ調整用ネジのカバーを外したままにして、走っては調整、走っては調整といった感じでやると効率的だ。

APtrikes125の場合、右側のゾンシェンのロゴが入った丸いカバーの中に調整用のネジがある。

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ただ、このカバーまず間違いなくネジが回らない。プラスネジなので無理をすると舐めて大ごとになるため、無理そうだったら素直にネジ緩めをバイク屋さんに頼むか、インパクトドライバーを使う。

  • アネックス(ANEX) インパクトドライバー 差込角12.7mm ケース付 ビット5本組 No.1901

舐めてどうにもならなくなり、バイク屋さんに持ち込む人が結構いるのではないかと思う。そういう結末が見えるなら、最初からバイク屋さんにやってもらうべきだろう。

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シフト操作のコツ #

シフトチェンジ時のコツをお伝えしたい。

シフトアップ時は アクセルオフにする前にペダルを踏み込み始める。 するとクラッチが切れ始め、回転が吹け上がりそうになるので、そうなったらアクセルをオフ。

回転が落ちると勝手にペダルが底まで落ち込んでシフトアップされる。

こんな感じの操作がベストだ。

力任せにペダルを踏み込めば問答無用にシフトアップされるが、機械が自らシフトアップのタイミングを図れる程度にアシストする、といった感じの力加減にすると、エンジンの負担が少ない感じでシフトアップされるのだ。

普通はまずアクセルをオフにし、間髪入れずペダルを踏むといった順序になるが、その場合タイミング次第でガタン、バチンといった異音が出がち。

そのタイミングを図ることに気疲れしたので、順序を逆にし、アクセルをオフにする前にペダルを踏み込んでみると、それが回避できることが分かった。

シフトペダル踏み込みの前半分はクラッチ切断、後ろ半分はシフトアップといった感じになっており、その二つを別の操作と認識するのも重要だ。

カメラのシャッターボタンは前半フォーカス固定、後半シャッター切りといった感じで、シャッターボタン押し込みに二つの操作が割り当てられていて、フォーカス固定のハーフシャッターを常用するが、それと同じような感じだ。

シフトアップ時はクラッチを切断してから回転が少し落ちるまで待つとスムーズにギアが入るが、それにはシフトペダル踏み込み操作の前半と後半の使い分けが必要になる。

一方シフトダウンはペダル蹴り上げ方向にシフトチェンジしない程度に軽く押し上げてからブリッピング(軽くアクセルを一瞬開く)するという方法で行っている。

うまくいくとブリッピングすると同時にギアがスッと勝手に入る。

寄生型シフトペダルのメリットまとめ #

  • 運転中、左手を離す必要がなくなるので、いつでもリアブレーキを使えて安全
  • リアブレーキをかけながらシフトダウン、という同時操作ができる
  • ウインカーをいつ操作するか問題から解放され、いつでもウインカーを出し、キャンセルできるようになる
  • ハンドルカバーの利用に都合がいい
  • 左手を離す必要がないので、シミー現象が起こりにくくなる
  • APtrikes125のシフトレバーはテコの原理で付け根に負担をかけ、トラブルの元になるが、シフトペダルのみにするとそれが回避できる(シフトレバー切断時)
  • 左側から乗車・降車するのが楽になる(シフトレバー切断時)

シフトレバー寄生型シフトペダルのデメリットまとめ #

  • 手で大きなストロークでシフト操作するより微妙なニュアンスが出しづらく、いつもではないが、手でやるより少し雑になってしまうときがある