シミー現象と対策

シミー現象と対策 #

APtrikes125に乗って一番びっくりするのは、シミー現象が起きることだろう。

シミー現象はステアリングが周期的に左右に暴れる現象で、最悪事故にもつながりかねない。

トライクには前輪が1つのものと、前輪が2つのものがある。

APtrikes125はその前者に当たるが、前輪一つのトライクに共通の欠点として、シミー現象が起きやすいというものがある。

APtrikes125では、恐らくすべての個体でシミー現象が起きる。

両手でシミー現象を抑え込む #

一番単純なシミー現象対策は、両手でハンドルを保持することだ。

そうすれば起きたシミー現象を抑え込むことができる。

実感としては、両手でハンドルを保持してさえいれば、シミー現象は起きない感じだ。

アクセルのある右側だけハンドルを持って運転することがあるが、その条件下ではシミー現象は発生する。

ハンドルに両手を添えていれば恐るるに足らぬシミー現象だが、ハンドルから左手を離してシフト操作をしなければならないAPtrikes125の場合、そのシフトチェンジの瞬間が宿命として隙になってしまう。

そして、まさにシフトチェンジのときにシミー現象が起きやすいこともあって、問題に感じる人が少なくないだろう。

右手一本でもシミー現象を抑え込むことはできるが、両手のときと違ってやや力を要する。

シミー現象を考慮した運転 #

シミー現象は片手運転のときに問題になりやすい。

シミー現象の起きやすい右左折、コーナーを曲がるときは、

  • 左手によるウインカーの操作
  • 左手(リアブレーキ)、右手(フロントブレーキ)を使ったブレーキング
  • 左手によるシフトダウン

この三つを考慮しなければならず忙しい。

バイクの運転に慣れていると、コーナー進入前にシフトダウンをやってしまいたくなるが、APtrikes125では左手の操作が渋滞してままならない。

APtrikes125の場合は、シフトダウンをせずにブレーキングからの右左折。曲がり終えてからシフトダウンをし、再加速といった操作がベストだ。

こうするとシミー現象が起きやすいコーナリング中は両手をハンドルに添えたままでいられるためだ。

APtrikes125は効きのいいリアブレーキが重要であるため、左手をハンドルから離すことにはリスクがあるという理由にもよる。

常態化したシミー現象とそうでないシミー現象 #

シミー現象とひとことに言っても、いつ発生するのかによって二つに大別できる。

一つは、走行中、いつハンドルから手を離してもシミー現象が発生する常態化したもの。

もう一つは、路面の凹凸からの外乱や、シフトチェンジ時のトラクションの変化があったときだけシミー現象が起き、一度落ち着いた後は再び同様の刺激が与えられない限り起きないというもの。

前者の常態化したシミー現象が出ている場合は異常が疑われるので、その原因を潰す必要があるだろう。

シミー現象が起きやすい状況 #

  • 片手運転時
  • 道路の凹凸などからの外乱があったとき
  • シフトチェンジの瞬間など、トラクションの変化があったとき
  • コーナリング中
  • リアサスペンションが柔らかい場合
  • タイヤが偏摩耗している場合
  • ホイールが歪んでいる場合
  • フロントホイールのハブベアリングが劣化している場合
  • アクスルシャフトが歪んでいる場合
  • アクスルナットが緩んでいる場合
  • フロントフォーク、フロントハブの組み付けが悪く、フロントフォークがハの字に開いている場合
  • フロントフォークが歪んでいる場合
  • ステムベアリングのプリロードが弱めに調整されている場合(ステムベアリングが劣化している場合)

常態化したシミー現象の解決 #

フロントハブベアリングの交換 #

ハンドルから手を離すといつでもシミー現象が起きる場合は、フロントホイールのハブベアリングの劣化ないし破損が疑われる。

APtrikes125のフロントハブベアリングは中国製のものが使われており、その品質は低い。

メーカーでのベアリングの圧入方法が悪い場合もあり、300km、1,000km、2,000kmといった比較的短距離の走行で劣化・破損することもあるそうだ。

ゴリゴリとスムーズに回らない状態のベアリングだと、シミー現象の原因になることもある。

使われているベアリングは規格品なので、NSK、NTNといった定評のある国産のベアリングへの交換が可能で、それが対策となる。

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推奨フロントハブベアリング(2個必要)

ベアリングが破損して走行不能となった事例も散見されるので、シミー現象関係なく、納車整備の一環としてフロントハブベアリングの国産品への交換を購入店に依頼するのでいいぐらいだ。

国産品への交換後は、恐らく車体の寿命を全うするまで持つと思われる。品質の差は歴然だ。

フロントハブベアリングのチェック方法 #

フロントハブベアリングが悪くなっているかどうかは、少なくとも前輪を浮かせないとチェックできない。

ジャッキスタンドを一つ用意し、ルーフを側面から押して車体を傾け、ジャッキスタンドを足で押して前輪後ろのフレームに噛ませると浮かせることができる。

筆者が使用中のジャッキスタンド

  • エマーソン(Emerson) 折りたたみ式でコンパクトに収納可能なジャッキスタンド 3t

ベアリングの打ち替え #

フロントハブベアリングの打ち替えには、ベアリングプーラー、ベアリングインストーラーといった専用工具を要する。

安全上非常に重要な部品であるし、専用工具も必要になるので、バイク屋さんに交換を依頼するのが無難だ。

納車がまだであれば、納車整備のメニューにフロントハブベアリングの交換を加えてもらうのをおすすめする。

フロントハブベアリングの内径は12mmなので、内径12mmのベアリングに対応したベアリングプーラーが必要だ。

内径12mm対応品のベアリングプーラーになると、安価な幅可変式は使えず、先端差し替え式になる。

取り外し時にはベアリングプーラーがあった方がいいが、圧入時はM12六角ボルト(フロントハブベアリングの内径が12mmなので)、M12ナット、30mmのワッシャーを使い、ハンマーで圧入で間に合うはずだ。

ちなみに、アクスルシャフト、アクスルナットの締め付けトルクは60N・m〜70N・mだ。

トルクレンチでトルク管理ができる環境になければ、前輪も後輪も外さない方がいい。

  • トルクレンチ(ASTRO PRODUCTS 01-09695 1/2DR プリセット型トルクレンチ TQ969 01-09695)

ベアリングにグリースを充填する場合は、ウレアグリースを使う。

作業時は前輪を浮かせる必要があり、ジャッキスタンドの用意も必要だ。

  • エマーソン(Emerson) 折りたたみ式でコンパクトに収納可能なジャッキスタンド 3t EM-124

PRIMARIDEのアクスルシャフトキットによる問題解決 #

APtrikes125のフロントハブに入っている二つのベアリングの間にカラーというパイプ状のスペーサーが入っている。

参考動画: https://youtu.be/ekUUv7QS8Wo?t=861

このカラーの長さが適切な長さより長いことがあり、フロントハブベアリングの寿命に影響を与えたり、フロントフォークがハの字に開くことによってシミー現象の原因になることがある。

参考記事: https://ameblo.jp/sukesukebutabuta/entry-12725548759.html

PRIMARIDEから出ているアクスルシャフトキットはこの問題を認識し、適切な長さのカラーと高剛性なアクスルシャフト、国産のハブベアリングをキット化。

前述の品質の悪い中国製のベアリングの問題と併せ、これらの問題の一挙解決を図るものだ。

PRIMARIDEのアクスルシャフトキット

フロントフォークスタビライザー装着による緩和 #

フロントフォークにスタビライザーを装着すると、シミー現象が緩和されることがある。

ただし、スタビライザーを装着しただけでは、シミー現象が解消することはない。

筆者は後出のマルモリ式のスタビライザーを自作パーツを交えつつ装着した。シミー現象の緩和を実感できたが、その後、リアサスペンションを柔らかいタイプにしたところ、ぶり返した。シミー現象は複合的な理由で発生するというわけだ。

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YouTuberのマルモリ氏はスタビライザーを自作されているが、使っている左右をつなぐパーツが入手困難だ。

フロントフォークスタビライザーには、ジャパンドラッグから発売されているもの。

メルカリで販売されているもの。

ヤフオクで販売されているものがある。

ヤフオクで販売されているものは長さ微調整機能がなく、個体差が考慮されていないので、避けた方がいいかもしれない。

フロントタイヤ交換による問題解決 #

フロントタイヤの形状がシミー現象の発生に大きくかかわり、接地面積の増加が緩和に効果があるようだ。

特に効果覿面なのがショルダーのある自動車用のタイヤをフロントタイヤとして装着するというもので、シミー現象が全く発生しなくなるという。

自動車用のタイヤは接地面が平たいため、いかにも左右への揺動が抑えられそうではある。

APtrikes125はトライク。バイクのようにバンクしないため、別に自動車用のタイヤでも基本的には支障はないのだ。

自動車用のタイヤをフロントタイヤとして装着すると直進安定性が向上。コーナリング時の片輪浮きが緩和されるなどのメリットも生じるが、駐車時などに行なう据え切りが重くなるデメリットも生じる(ステアリングダンパー装着時と同程度という話あり)。

筆者もフロントタイヤを自動車用のタイヤに交換してみた。

顛末は以下の記事に書いた。

自動車用タイヤへの交換で謳われている効能は確かに実感した。

バイク用のフロントタイヤへの交換でも、純正のタイヤより扁平率が高く、接地面積が増えるタイヤへの交換では、シミー現象が起きにくくなるようだ。

APtrikes125でフロントタイヤに使われる自動車用タイヤの例としては以下がある。

型番幅(mm)扁平率外径周長(mm)周長(%)(※2)
RADAR Dimax Classic 125R12 62S12580505158597.8
NANKANG AS-1 135/80R12 68S135805211635100.9
YOKOHAMA BluEarth-ES ES32 135/80R12 68S135805211635100.9
BRIDGESTONE SNEAKER SNK2 135/80R12 68S135805191629100.5
YOKOHAMA BluEarth-ES ES32 145/70R12 69S(※1)14570509159898.6
DUNLOP ENASAVE VAN01 145/80R12 80/78N(※1)145805411699104.8
  • ※1: フェンダーを固定するボルトの低頭ボルトへの交換が必要

  • ※2: APtrikes125純正タイヤの周長1620mmに対する率。メーターギアは前輪に付いているため、これが100でないとスピードメーター、オドメーターが狂う。周長が100%を切る場合は、実際よりスピードが高く表示され、実際より長く移動した表示になる

  • タイヤサイズかんたん計算

ステアリングダンパーによる緩和 #

ステアリングに負荷を加えることで安定化を図るステアリングダンパーというものがジャパンドラッグから販売されている。

これを装着するとハンドルを左右に切る動きが重くなる。

これによって、あたかも常時手で支えているかのような効果を得ようというわけだ。

フロントタイヤを自動車用のものに交換すると、かなり必要性は減るようだ。

ステムナットのプリロード調整による緩和 #

ハンドルを左右に動かすときの軸になるステム部分にはステムベアリングが内蔵されており、これを締め付けるステムナットの締め付けの調整(プリロード調整)で動きを重くしたり、軽くしたりが可能。

プリロードを強めに調整する、つまり動きを重めにすることで、シミー現象抑制が可能なようだ。

オートリキシャでの事例:

デリケートな作業かつ、締め過ぎるとステムベアリングを傷めるのでバイク屋さんに作業を依頼した方が無難だ。

納車がまだなら、納車整備の一環として依頼した方がいいだろう。