X68000シリーズ由来の音楽データMDXをiPhoneで再生!MDX Player for iOSがリリース
2016/05/24
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2016/05/24
もくじ
ひとりぶろぐのmoyashi (@hitoriblog) です。
1980年代末〜1990年代にかけ、インターネット前夜まで根強い人気を誇った国産パソコンSHARPのX68000シリーズ。
X68000シリーズは、最後の、そして最も贅沢なホビーパソコン。パソコン通信、草の根ネットを背景とした独自のUGC文化を花開かせました。X68000はFM音源(YM2151)、ADPCM(MSM6258)を搭載し、当時としてはハイスペックな音源で音楽表現に優れるという特徴を有していました。
Photo: tmizo
そのX68000を所有するパソコン通信ユーザーを中心に広く流通した音楽データが、X68000シリーズ用の内蔵音源ドライバMXDRVに対応したMDX。
当時非常にたくさんのMDXデータが作られ、流通し、楽しまれていました。
MDX以外にも、Z-MUSICなどのMXDRVを凌駕する優秀な音源ドライバ、音楽データ形式があったのですが、データの流通量が飛び抜けて多く、事実上の標準となっていたのはMDXでした。
そのMDXデータをiOS機で再生できるアプリ、MDX Player for iOSがリリースされました。iPhone、iPadに対応したユニバーサルアプリとなっています。
動作には、iOS6.1以上が必要です。
MDX Player
カテゴリ: Music
販売元: NagisaWorks, K.K.(サイズ: 2.6 MB)
全てのバージョンの評価: (23 件の評価)
MDX Playerの画面デザインは、当時広く普及していた音楽データプレイヤーMMDSPオマージュとなっています(続きは[Read More]から)
MDX Player for iOSの作者は、iOSユーザーならだれもが知っている神アプリ、i文庫シリーズの @nagisawks さん。
i文庫S
カテゴリ: Book
販売元: NagisaWorks, K.K.(サイズ: 20.1 MB)
全てのバージョンの評価: (338 件の評価)
i文庫HD
カテゴリ: Book
販売元: NagisaWorks, K.K.(サイズ: 21.1 MB)
全てのバージョンの評価: (2,730 件の評価)
神アプリ中の神アプリを手がける @nagisawks さんが、ニッチもニッチ、大ニッチなアプリをリリースするというギャップが面白いですね。
@nagisawks さんが、ご自身のブログにMDX Player for iOSリリースまでの経緯を書かれています。
NagisaWorks » MDX Player for iOS
僕も元X68000ユーザーで、TwitterでX68000ネタをTwitterに投稿することが少なくないのですが、そうした言動を知ってMDX PlayerのAd-Hocビルドを送ってくださったのでしょう。
聞けば、 @nagisawks さんもかなり濃いX68000ユーザーだったそうです。
IT業界、ゲーム業界の開発者を中心に、元X68000ユーザーを見つけることは珍しくありません。
ニコファーレ、携帯動画変換君、24時間ワンセグ野郎のMIROさん(@MobileHackerz)。
うわあああ常駐ルパンもMIROさんだったか RT @MobileHackerz: あと #x68000 で作ったもの。 常駐ルパン(キーボード入力をルパン3世タイトル風にする常駐ソフト)、常駐タキシード仮面、その前身のエラー起こると爆発するやつ、panicBBS宣伝ぱにっく等
— moyashi (@hitoriblog) February 2, 2011
MIROさんは、X68000のUGCシーンでも主役級だった方。MACS/MOONというアニメーションドライバをはじめ、聞けば「ああ!あの!」と膝を打つ有名ソフトウェアを作ってらしたんです。携帯動画変換君の前の時代には、腕コンRuputer用のソフトウェアを精力的に開発されていました。ほんとに凄い人です。
MAGES.の志倉 千代丸さん(@chiyomaru5pb)。
俺が考える現代のX68000 XVI専用モニタが届いた!質感、サイズ、色味、性能、全てがベストマッチでカッチョイイ!(◎_◎;)ナケルレベル http://t.co/CUeGzm1
— 志倉千代丸/Chiyomaru Shikura (@chiyomaru5pb) August 6, 2011
モバツイのえふしんさん(@fshin2000)。
F’s Garage @fshin2000 :技術力、ソフトウエア発想共に最もアップルに近かったシャープ…X1/X68の思い出
モバツイ …
話はちょっと逸れましたが、元X68000ユーザーの活躍を知ると、なんだか嬉しい気持ちになりますね。ほかにも元X68000ユーザーの有名人をご存じでしたら教えてください。
iOS用のMDX Playerは必要か否か。そういう身も蓋もない問いがあるならば、それに対する答えは否でしょう。
MDXはWindows、Linux、Android、OS X(Mac)などで再生でき、そういった再生環境を使ってWAVデータに書き出し、mp3などにエンコードし、それをiTunesを通してiOS機に転送すれば、MDX Playerは不要です。
MDXはX68000の内蔵音源を駆動して再生するためのデータフォーマットですので、本来ならばそういった音源を再生機器に搭載している必要があります。
X68000以外に移植されたMDX Playerはソフトウェア音源を搭載し、再生に当たって元の音源を不要としています。そして、MDXデータを逐次解釈し、ソフトウェア音源で再生する作りとなっていますが、この逐次解釈、ソフトウェア音源で再生という仕組みに意義があり、そこが萌えポイント。
MDXデータをそのまま再生できることは、好きな人にとってはたまらんものなのです。
この先、MDXコンパイラをiOS上から利用できるときがきたら、iOS機だけでのMDX製作が実現するやもしれませんし。
これでもまだスタンスとしてはヌルくて、実機再生、実際の音源チップで再生することを旨とする趣味人も存在します。
MDX Player for iOSには、内蔵サンプルが2曲入っています。
MDXデータの入手までは、このサンプル曲でMDX Player for iOSの再生能力を試してみることができます。
権利関係がクリアなMDXデータが必要だったことから「無ければ作る」というX68000精神に基づき僕が作ったもので、折角なのでX68000ネタで考えてみました。
聞けばお分かりの通り、さきほど貼った動画に出てきたX68000のテーマをモチーフにしたミクものです。
ADPCMで、MDXでミク(笑)。この倒錯した感じが面白気ではありませんか。
歌詞は、X68000の広告のキャッチコピーをパク……もとい、モチーフにしました。
「X68030のテーマ」パク詞/パッ曲: moyashi
夢を超えた
アートの領域へ
夢の続き、今語ろうよ
X68000(ペケロッパ)
夢を超えた
ワークステーション
父を越えろ
開かれた知性
X68000(ペケロッパ)
大したものではありません。ご笑聴ください。サイコソルジャーから何年ですかね?
データは、run68でnote.xをWindows XP上で動かして作りました。
MDXで扱える最長の音符は1と1/3小節(デフォルト時)という制約があるので、ボーカルパートは1小節単位で切り貼りする必要があって結構面倒でした。
ゼロクロスを考えないでスライスしてますが、意外とプチらないものですね。
MDX PlayerはMDXデータが無ければ始まりません。
当時、X68000ユーザーの間でMOが異常に普及していたので、データの残り具合はよさそうな気がしますが、いまだにコレクションにアクセス可能な状態を維持している人は少ないでしょう。
MDXデータをインターネットに公開している人はまだ居るので、「mdx veylren」、「mdx 斎藤彰良」、「mdx asuka 120%」などのキーワードで検索すれば行き当たるでしょう。
当時、若くして亡くなられた斎藤学(るい)さんのデータを20年ぶりぐらいに聴いてみました。若くして亡くなられたということでは、MDXを語る上では外せないPCM8の江藤啓さんもそうなんですよね。訃報が続いて当時びっくりしました。
MDXデータはファイル名がShift-JISになっていますが、解凍時のShift-JISからUTF-8への変換には、The Unarchiverを使うといいでしょう。
The Unarchiver
カテゴリ: Utilities
販売元: Dag Agren(サイズ: 5.0 MB)
全てのバージョンの評価: (209 件の評価)
用意したMDXをMDX Player for iOSに転送するには。
大きく二つ方法があります。MDX Player for iOSをダウンロードする人に初心者は居ないと思うので詳細ははしょります。
フォルダごと転送したい場合は、フォルダの名前に「フォルダ名.app」「フォルダ名.pkg」といった感じで拡張子を付けてからドラッグ&ドロップします。
転送を終えたら、iTunesファイル共有越しに見えるフォルダの拡張子を削除して構いません。
大量にフォルダ毎の転送をしたくば、iFunBox、iExplorer、Nautilusなどを使いましょう。
連携を済ませると、「Dropbox/アプリ/mdx」というフォルダが出来るので、そこにMDXデータを置いて同期させます。環境によっては、「Dropbox/Apps/mdx」となるかもしれませんので、うまくいかない場合はチェックを。
App Storeでの「MDX」というキーワードでの検索にはひっかかりませんが、実はMDXの再生に対応したプレイヤーがMDX Player for iOSのほかに存在します。
Modizer
カテゴリ: Music
販売元: Yohann Magnien(サイズ: 91.7 MB)
全てのバージョンの評価: (17 件の評価)
それはModizer。MODに分類されるファイル全般を再生できそうな勢いの多フォーマット対応プレイヤーですが、これがMDXの再生にも対応しています。
しかし、ModizerはPCMチャンネルのボリューム変更に対応していないなど、再現性に難を残しています。
一方、MDX Player for iOSは、元X68000ユーザーならば知らない人は居ないGORRYさんの作られたAndroid用MDX Player、GAMDXを元にして作られています。
GAMDX – Android MXDRV Player – GORRY’s Website
GORRYさんは以下のページからたどれるTogetterに武勇伝が語られていますが、電波新聞社から発売されていたゲームの開発、特に音源ドライバの開発にかかわっていた筋金入りの方。
後藤浩昭さん – か~こ – 人物・団体リンク集 – X68000 LIBRARY
ここに名前が連なっている移植ゲームのサウンドの出来は、ほとんど本物と聞き分けが付かないレベルでした。
そういった希有な血統を持ったソースコードが使われているMDX Player for iOSは、まず出自が違うのです。
GAMDXは演奏再現性についてGORRYさんの手で検証が行われており、Modizerでは対応していないPCMチャンネルのボリューム変更にも無論対応しています。
ちなみに、 @nagisawks さんも、音源ドライバの開発をされていたことがあるそうです。
@hitoriblog @cqa02303 昔サウンドドライバー書いてたことをちょっと思い出してしまった。。
— Nagisawks (@nagisawks) May 1, 2013
X68000ユーザーによる、X68000ユーザーのためのMDX Player、それがMDX Player for iOSです。
MDX Player for iOSはオープンソースで、GitHubにてソースコードが公開されています。
無いものは作るX68000精神に基づき、意見、要望があらば、コミットせよとのことです。
既に、知り合いのカナダ人Jailbreak開発者 @Sakurina 君がOpen In…対応のPull Requestを投げてますね(笑)。
@nagisawks さん、久々に熱いアプリをありがとうございます。