動画配信サービス「Hulu」が2017年5月に全面リニューアル!モバイルのオフライン視聴機能は?
2017/04/22
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2017/04/22
月額933円(税抜)で見放題の動画配信サービス、おなじみ「Hulu」が、2017年5月17日に全面リニューアルされます。
どのように変わるのか、2017年4月20日に開催された発表会の内容を元にレポートをお届けします。
もくじ
2011年9月から日本でサービスインになったHuluは、今年で7年目を迎えます。
会員数は順調に伸び、2016年11月には151.2万人に。
2014年4月には日本テレビの完全100%子会社として日本テレビグループ入り。
日本での地盤を着実に固めてきたHuluですが、日本人のニーズにこたえるために制約となってきたのが、本家Huluの配信システム。
現在は本家Huluのシステムをローカライズしたものが使われていますが、日本独自の仕様に変えたくても変えられないジレンマを解消するため、オリジナルの配信システムの開発に着手。
より日本人にとって使いやすいHuluになるために必要な改善が施され、また独自に改良を施す自由度を得たのが、2017年5月17日から導入が開始されるジャパンオリジナルの配信システム。
自社による開発体制が整い、今回のリニューアルを機に、今後も継続的な改善が続けられていくということです。
2011年のサービスイン当時はPCからの視聴が多かったHuluですが、現在ではモバイルからの視聴が最も多く、これからも伸びていくのがモバイルだと予想されています。
今回のリニューアルには、モバイルの強化という観点からの改善点が多く含まれています。
UIがデバイスに応じたものに最適化され、より使いやすくなりました。
従来白ベースだったデザインが黒ベースになり、雰囲気がガラっと変わっています。
また、従来字幕版と吹き替え版が別のコンテンツ扱いでしたが、それが統合され、設定から随時切り替えることができるようになっています。
従来別々のカウントだった視聴数ランキングの結果も一つに統合されることになります。
モバイルでの視聴が最も多い昨今の視聴環境の動向を受け、モバイル向けの機能が拡充されています。
これまではPCだけで視聴が可能だったリアルタイム配信が、モバイルでも視聴可能となります。
リアルタイム配信予定のコンテンツ:
実際の視聴画面では見逃し配信が後に続き、オンデマンドへの移行もすぐできるように配慮されていますね。
近年格安スマホ、格安SIMを使うエコノミー志向のユーザーがスマートフォン、タブレットユーザーの約10%を占めるようになっていますが、そうなると気になるのが動画を視聴した場合の通信容量。
今回のモバイル版のリニューアルでは画質選択が可能となり、画質に応じた通信容量の目安が表示されるようになっています。
推奨画質では1時間当たり約900MBを消費。明示されることで無用な不安を感じることがなくなっています。
モバイル用のアプリにはiOS版とAndroid版(Fire OS版)がありますが、これまで諸般の事情で機能やユーザー体験がAndroid版より劣っていたiOS版が強化されます。
現行のiOS版はちょっと殺風景な感じですが、これが今回のリニューアルで見違えるようになります。
現在はモバイルで利用する人が最も多く、そしてモバイル向けでは最もユーザーを多く擁するのはiOS版ということで、Huluにとっては大きな懸念が解消されることになります。
Huluの全面リニューアルと聞いてまず最初に期待するものに、コンテンツのダウンロード機能があるでしょう。モバイル機能の強化と聞けば、もうこれはダウンロード機能の追加だ! と確信するに違いありません。
自宅のWiFi経由でダウンロードを済ませることができれば、通信容量を消費することなく外出先や圏外(オフライン)の環境で動画を楽しむことができるからです。
しかし、残念ながら今回のリニューアルではHuluのモバイルアプリにダウンロード機能は追加されません。
Huluによれば、ダウンロード機能の追加は検討中ではあるが、実装は現段階では見送っているということです。
権利者が許諾の条件とする高いレベルのコンテンツ保護機能がコンテンツ拡充のために必要で、ダウンロード機能はコンテンツ保護の要求と相反する側面があるようです。
筆者の勝手な推測ですが、日本テレビグループとなり、多数のステークホルダー(利害関係者)と関与する環境になったことも影響を及ぼしているかもしれません。
ダウンロード機能を実現したとして、ダウンロード不可能な設定にせざるを得ないコンテンツが出てくることになるということで、ユーザーとしてはぜひ欲しい機能でも、その実現は一筋縄ではいかないようです。
しかし、競合サービスとの差別化の大きなポイントにもなっていますし、想定済みの質問といった登壇者からの説明の様子では、近い将来の実現は十分あるように思えました。
作品を見つけるための機能が拡充されます。
2017年4月現在4万本以上の作品を配信しているHuluですが、ユーザー的に困るのがたくさんの作品の中から思った作品にたどり着けないこと。
今回のリニューアルでは、作品と出会うための二つの新たなアプローチが提供されることになりました。
一つは、様々な条件を与え、作品を絞り込んでいけるドリルダウン絞込み機能(※)。
※モバイル版には、シンプルなドリルダウン絞込み機能が実装されます
年代、ジャンル、出演者といった条件を与えて対象作品を絞り込み、視聴する作品を見つけることができます。
この機能のために、検索用の情報、メタデータを新たに追加しているということです。
もう一つは特集ページ。コンテンツに愛情を持ったスタッフが多いHuluの編集による血の通った特集が、続々登場予定です。
雑誌の特集のように、様々な視点でまとめた特集ページは作品紹介文もHuluのスタッフが独自に書き起こしたものが使われ、レコメンドの熱意が伝わるものになるはずです。
ヴィレッジヴァンガード、TSUTAYA、TOWER RECORDSの店頭ポップに誘われてアクションを起こした経験のある人は多いと思いますが、人の手によって編成された特集ページは、検索機能を使った能動的な作品探し、視聴履歴を使った自動的なレコメンドとはまた違った作品との出会いの場を提供してくれるでしょう。
新しく、マルチプロフィール機能が追加されます。
マルチプロフィール機能とは、コンピューターのOSにあるマルチアカウント機能と同様のものです。
プロフィールを複数(MAX6名)追加して、それを使い分けることが可能。
視聴制限の範囲などがそれぞれのプロフィールで変えられるため、子供に見せるコンテンツを子供向けのものに制限したいといったニーズにこたえることができます。
12歳以下の子供が対象となるキッズモード「Hulu Kids」では、キッズ向けのコンテンツだけが選ばれてリストアップされます。ノーマルモードは黒ベースのUIなのに対し、キッズモードでは白ベースのUIと雰囲気がガラっと変わりもします。
視聴履歴の記録もプロフィールごとに別々になっているため、見るコンテンツの傾向が違うパパとママの間でもプロフィールを分けておけば、視聴履歴を元にセレクトされる自動レコメンドの内容が汚染されることがなくなります。
最近、TSUTAYAなどのビデオレンタル店に行くと、そのあまりの様変わりの大きさにびっくりしてしまいます。
筆者の地元の店舗ではセルビデオのコーナーは棚一つ、ビデオレンタルのコーナーも縮小され、雑誌やコミックを売るスペースが新たに出現。
レジはセルフレジに取って代わられて、以前はレジに鈴なりに配置されていた店員はいなくなってしまいました。
本のコーナーには雑貨が多く置かれ、ヴィレッジヴァンガード化が進んでいます。
業界を取り巻く環境の変化が手に取るように分かります。
Huluをはじめとする動画の配信サービスの勃興が、従来の業態のビデオレンタル店を直撃しているのです。
定額制の動画配信サービスの快楽を知ってしまったら、もうビデオレンタル店に赴く理由などありません。
この破壊的なイノベーションは、行くところまで行ってもらうしかありません。
まだユーザー数が150万人(2016年12月時点)ということで、権利者に言うことを聞かせられるところまでは行っていないのでしょう。
こうなったら、すべてのコンテンツを動画配信サービスに集約できるレベルまで、暴力的にユーザー数を伸ばしてもらいたいものです。
日本において影響が大きいと思われるiOS版の強化は、そのゴールに確かな筋道を付けたように思います。
定額制の動画配信サービスは、一度味わうとガッチリと生活の一部に組み込まれます。まだその魅力を味わったことのない人は、ぜひ試してみてください。