大容量ニッケル水素充電池の寿命に関するショッキングなデータ
2017/02/05
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2017/02/05
雑誌「トランジスタ技術」の2016年10月号に、ニッケル水素充電池に対するサイクル試験の結果が掲載されていました。
サイクル試験とはニッケル水素充電池に充放電を繰り返して特性の変化を見るもの。
今回の試験は内部抵抗の変化にフォーカスしていますが、充放電回数が増えると、その分だけ内部抵抗が増えるというのが一般的な傾向となります。
もくじ
問題のサイクル試験の結果がこちら。
グラフ「サイクル試験により充放電を繰り返したときの電池の内部抵抗の変化」
— Yáge@ (@bron84) October 2, 2016
大容量をうたう充電池ほど少ないサイクル数で寿命を迎える。100mΩあたりまでなら安心して使える。200mΩ〜300mΩになると充電器ではじかれ充電できなくなる
内部抵抗は電流の流れやすさに関係し、内部抵抗が大きくなると電流が流れにくくなります。
内部抵抗が大きい電池から電流を流そうとすると電圧が低下するため、内部抵抗が大きいと機器が必要とする電圧に満たなくなり、あるレベルから機器が動作しなくなります。
つまり、このグラフはニッケル水素充電池の寿命を示していることになります。
グラフの立ち上がりが急峻な電池は、なだらかな電池と比較して、早く寿命を迎えることになります。
このグラフでは内部抵抗100mΩまでを安心して使える喫水線として定義。それを踏まえてグラフをつぶさに見ていくと、非常にショッキングな事実が見えてきます。
つまり、このグラフのキャプションにある通りですが、大容量のものほどグラフの立ち上がりが急峻で、いち早く寿命を迎えるということです。
試験に使用しているのは単3電池だと思われますので、容量はそれを前提に併記していきますが、このグラフの中で最も寿命が短い製品群が「TOSHIBA IMPULSE」(2,400mAh)と「Panasonic eneloop pro」(2,500mAh)。
どちらも寿命である内部抵抗100mΩに到達するのは、驚くべきことに充放電サイクル約70回時点。甘めに200mΩとしても、約80回で到達してしまいます。
スペックにうたわれている公称充電可能回数は500回なので、実際はその約1/7しか持たないことになり、その落差に愕然としてしまいます。
逆に、内部抵抗がなかなか上がらず、長寿命を誇る機種が「ROC Ni-Cd」(700mAh)と、「Panasonic eneloop lite」(950mAh)。
「Panasonic eneloop lite」(950mAh)は「Panasonic eneloop pro」(2,500mAh)の38%の容量しかないものの、充放電サイクル900回を超えても内部抵抗は50mΩ以下で、まだまだ使用可能です。
「Panasonic eneloop lite」の公称充電可能回数は5,000回なので、900回は序の口。この性能には納得感があります。「ROC Ni-Cd」は元々内部抵抗の低いニッカド充電池なので、「Panasonic eneloop lite」を上回る特性があっても不思議ではありません。
この結果を表にまとめたのが以下。
メーカー | 機種 | 種別 | 容量 (ソートキー) |
公称充電可能回数 | 内部抵抗 100mΩ到達 充放電回数 |
---|---|---|---|---|---|
Panasonic | eneloop pro | Ni-MH | 2,500mAh | 約500回 | 約70回 |
TOSHIBA | IMPULSE | Ni-MH | 2,400mAh | 約500回 | 約70回 |
SONY | サイクルエナジーゴールド | Ni-MH | 2,100mAh | 約1,000回 | 約130回 |
Panasonic | 充電式EVOLTA | Ni-MH | 1,950mAh | 約1,800回 | 約190回 |
Panasonic | eneloop | Ni-MH | 1,900mAh | 約2,100回 | 約350回 |
ザ・ダイソー | Re VOLTES | Ni-MH | 1,300mAh | 記載なし | 約210回 |
SONY | サイクルエナジーシルバー | Ni-MH | 1,000mAh | 約3,000回 | 約430回 |
Panasonic | eneloop lite | Ni-MH | 950mAh | 約5,000回 | 900回以上 |
ROC | Ni-Cd | Ni-Cd | 700mAh | 不明 | 900回以上 |
容量の多い順に並べてみると、「内部抵抗100mΩ到達充放電回数」がおおよそ少ない順に並び、「大容量をうたう充電池ほど少ないサイクル数で寿命を迎える」傾向が露わとなります。
唯一その相関関係に逆らう存在が「Panasonic eneloop」。1,900mAhの容量を持つにもかかわらず、350回の充放電を繰り返すまで内部抵抗が100mΩに達しませんでした。非常に優秀です。
スペック上ほぼ同一の性能である「Panasonic 充電式EVOLTA」との差が顕著です。
もともと、大容量のものと小容量のものに耐久性の差があることは公称充電可能回数で示されていますが、それでも最大容量域の2,400mAh〜2,500mAhになると、実際の寿命は充放電サイクル約70回というのは大方の人の想定外の結果ではないでしょうか。
僕はこれまで公称充電可能回数の500回も充放電しないだろうから、最大容量がすべてにおいて正解だと考えていましたが、それが70回ともなると、普通に使い切ってしまいそうです。
大容量のニッケル水素充電池は思いのほか短命であるという事実と用途を踏まえて製品選択をする必要がありそうです。