「REALFORCE TKL for Mac PFU Limited Edition」テンキーレスのMac用REALFORCEにキー押下圧45g版が登場
2020/05/24
価値ある情報をユーザー視点で発信するブログ
2020/05/24
自社開発の静電容量無接点式キースイッチ採用で抜群のキータッチと高耐久性を実現し、定評のあるキーボード、東プレのREALFORCEシリーズ。
高級キーボードの一つの頂点として、聞き及んだことのある人は少なくないでしょう。
2020年5月21日、Macユーザー垂涎のテンキーレスREALFORCE「REALFORCE TKL for Mac」(東プレ)に、バリエーションモデルPFU Limited Edition(PFU)が新しく加わることが発表されました。
今回は、この「REALFORCE TKL for Mac PFU Limited Edition」の試供品を受け取った筆者が当製品について紹介します。
「REALFORCE TKL for Mac PFU Limited Edition」(PFU)はPFU Direct専売、つまり通信販売のみで、家電量販店などの実店舗では扱われません。
本記事には経緯や差異を説明する必要性から東プレ、PFUの二社の製品が入り乱れて登場し、また製品名が似ているので何のことを指しているのか混乱を招く心配から、しつこくどちらの製品なのか付記することにします。
PFUの看板製品の一つであるHHKB(Happy Hacking Keyboard)に採用されている静電容量無接点式キースイッチは東プレ製。
この二社は縁の深い関係にあり、そうした関係性から今回のモデルが開発されています。
もくじ
PFU Limited Editionといえば、2018年6月登場の「REALFORCE R2 PFU Limited Edition」(PFU)が記憶に新しいところです。
東プレの製品をPFUがアレンジし、PFUの販路を使って販売する試みはここから始まりました。
今回の製品はPFU Limited Editionの第2弾ということになります。
「REALFORCE R2」(東プレ)から派生したMac対応版が既発売の「REALFORCE TKL for Mac」(東プレ)。
「REALFORCE TKL for Mac」(東プレ)のPFU限定仕様が「REALFORCE TKL for Mac PFU Limited Edition」(PFU)という相関関係があります。
「REALFORCE R2 PFU Limited Edition」(PFU)には、
といった特徴がありました。
新登場の「REALFORCE TKL for Mac PFU Limited Edition」(PFU)と、オリジナルの「REALFORCE TKL for Mac」(東プレ)との差異のポイントは以下。
「REALFORCE TKL for Mac」(東プレ)には元々英語配列版があり、日本語配列でもキートップにかなの印字がないので、「REALFORCE R2」(東プレ)と「REALFORCE R2 PFU Limited Edition」(PFU)との間ほどの差異がありません。
オリジナルの「REALFORCE TKL for Mac」(東プレ)とのマトリックスを作ると以下のようになります。
HHKB Professional HYBRID Type-S |
REALFORCE TKL for Mac PFU Limited Edition |
REALFORCE TKL for Mac (TKL SA) |
REALFORCE TKL for Mac (TKL) |
|
---|---|---|---|---|
スイッチ音 | 静音 | 静音 | 静音 | 標準 |
APC | なし | あり | あり | なし |
キー荷重 | 45g | 45g | 30g | 変荷重 |
要するにキー押下圧が45gに変更にされた「TKL SA」(東プレ)が「REALFORCE TKL for Mac PFU Limited Edition」(PFU)ということになります。
マトリックスには「HHKB Professional HYBRID Type-S」(PFU)も登場させましたが、キー押下圧45gというのはHHKBのアイデンティティであり、それに共感するユーザーに向けた製品なのです。
HHKBを使っているが、少し大きくなっても構わないからファンクションキーやカーソルキーなどが独立したキーボードが欲しくなった人、あるいはHHKBまで思い切れないが、高級キーボードが欲しい人が購入を検討することになるのでしょう。
「REALFORCE R2 PFU Limited Edition」(PFU)には日本語配列と英語配列が用意され、本体色にはそれぞれスーパーホワイト+シルバーとブラック+シルバーがあり、計4種類のバリエーションがあります。
モデル名 | 参考価格 | 配列 | 本体色 |
---|---|---|---|
R2TLSA-JP4M-BK | 28,500円(税抜) 31,350円(税込) |
日本語配列 91キー | ブラック+シルバー |
R2TLSA-JP4M-WH | スーパーホワイト+シルバー | ||
R2TLSA-US4M-BK | 英語配列 87キー | ブラック+シルバー | |
R2TLSA-US4M-WH | スーパーホワイト+シルバー |
前述の通り、販売チャンネルはPFU Directのみ。PFU DirectはAmazon、楽天、Yahoo!ショッピングに出店しているので、主要インターネット通販サイトで購入可能となっています。
これまで見てきたように「REALFORCE TKL for Mac PFU Limited Edition」(PFU)はキー押下圧が45gなだけで、機能面はオリジナルの「REALFORCE TKL for Mac」(TKL SA)(東プレ)と何ら変わりはないのですが、機能をおさらいしておきます。
HHKB Professionalシリーズのユーザ、そしてその予備軍が食指を伸ばすであろう想定から、「HHKB Professional HYBRID Type-S」(PFU)との比較という観点でレビューをします。
下掲のリストのように「REALFORCE TKL for Mac PFU Limited Edition」(PFU)の基本スペックは「HHKB Professional HYBRID Type-S」(PFU)と共通。
表面上の違いはAPCの有無だけです。
実際、2018年登場の「REALFORCE R2 PFU Limited Edition」(PFU)は、キーの感触やレイアウトが「HHKB Professional2」(PFU)とよく似ていました。
「REALFORCE TKL for Mac PFU Limited Edition」(PFU)と「HHKB Professional HYBRID Type-S」(PFU)とを比較してみると、だいぶ違いを感じます。
REALFORCE TKL for Mac PFU Limited Edition |
HHKB Professional HYBRID Type-S |
|
---|---|---|
キートップ | 表面の凹凸のキメが細かく、艶消し塗装をしたように感じる | 梨地のプラスチックを無塗装で使ったような感触で、表面がサラサラとしたように感じる |
静音性 | キータイプに伴うノイズは穏やかで、打撃音がないことは元より、摺動に伴っても囁くような音しかしない | 比較するとやや賑やかで、遊びのあるパーツ同士が触れ合うようなキャラキャラ、シャコシャコと擦れるような音がする |
キータッチ | コクコクとした穏やかなクリック感がある | 比較するとややアタックを感じるフィーリング |
静音機能のない「HHKB Professional2」(PFU)と「HHKB Professional HYBRID Type-S」(PFU)とでは、後者はかなり静かに感じただけに、この比較ではちょっと驚きを感じました。
とはいえ、どちらのモデルにも静音機能が搭載されており、通常モデルより騒音の発生が30%低減されています。
「REALFORCE TKL for Mac PFU Limited Edition」(PFU)は「HHKB Professional HYBRID Type-S」(PFU)と同等の静音水準という触れ込みですが、「REALFORCE TKL for Mac PFU Limited Edition」(PFU)の方が静音性が高く感じます。
キー押下時の荷重変動特性はいずれもソフトタクタイルフィーリングとなっているはずですが、「HHKB Professional HYBRID Type-S」(PFU)の方がやや元気に感じました。
APC(アクチュエーションポイントチェンジャー)は、キースイッチのオン位置を3段階に調節できる機能のこと。
APCはFn+↑で切り替えができます。
切り替え直後はHomeキーの上にあるLED4灯が一定時間全点灯になり、設定に応じてLEDの色が変わります。
オン位置を浅くすれば入力の素早さが得られ、オン位置を深くすれば誤入力の防止ができます。任意に設定が可能なので、使い勝手において何を優先するかを自分で決められます。
個別設定はmacOSで動作する「REALFORCE Software」でソフトウェア的に行います。1キーごとに別々の設定を適用できる際立った特徴があります。
設定はキーボードに内蔵された不揮発性メモリに記録され、以降特別な操作を必要とせず自動的に設定が再現されるほか、「REALFORCE Software」がインストールされていない別のPCやMacに接続しても、その設定が維持されます。
APCを補う付属物に一体型キースペーサーがあります。
APCはキーのオン位置を浅くしたり、深くしたりできますが、キーそのもののストロークは4mmで変わりません。
例えば、入力の素早さを狙ってオン位置を最浅の1.5mmに設定しても、キータイプそのものは底打ちの4mmまで押し込んでいる場合、その効果は限定的です。
そこで、付属の一体型キースペーサーをキートップの下に挟み込むと、キーストロークを物理的に短縮できます。
付属の一体型キースペーサーは2mm厚と3mm厚の二つ。
キースペーサー | キーストローク |
---|---|
なし | 4mm |
2mm | 2mm |
3mm | 1mm |
3mm厚を使用し、APCでオン位置を1.5mmに設定すると、キーストロークが約1mmになります。
こうすると、キーストロークの浅いノートパソコンのキーボードともまた違う、独特の使い勝手になります。
ただし、一体型キースペーサーとAPC設定の組み合わせによっては、入力不能になる場合があります。
キースペーサー | APC設定 | ||
---|---|---|---|
1.5mm | 2.2mm | 3mm | |
なし | ○ | ○ | ○ |
2mm | ○ | ○ | × |
3mm | ○ | × | × |
一体型キースペーサーの挟み込みは、付属の工具(キートッププラー)を使っていったんキートップを外した後に行う必要がありますが、これは時間を要するかなり地道な作業となります。
一体型キースペーサーはウレタンスポンジのような材質でできていて、約10%の静音効果をも備えます。これを使うと、元々ある静音機能の効果と合わせて、通常モデルより40%高い静音効果を発揮します。
注意すべきは、付属する一体型キースペーサーは中央のキーの部分だけで、Esc、ファンクションキー、カーソルキーなどの部分に使えるスペーサーは付属せず、別売りとなっていることです。
一体型キースペーサーは使わずオン位置を1.5mmにして使った後、3mmに切り替えてみたところ、底付きするまでキーを押し込んでいるのは変わらずとも、1.5mmのときより重く感じるのが面白いところです。
文字が画面に表示されるタイミングの遅い早いを体感できているようで、その分意識が次の入力に早く向くようです。
本シリーズは複数のキーが同時に押された場合、その押された順序に従ってすべて認識されるNキーロールオーバー機能を搭載しているので、1.5mmで慣れると次第に入力が早くなっていきそうです。
一体型スペーサーは、使用するとキーの打ち心地がソフトになり、底付きしたときの衝撃を和らげるため、大量のタイピングで日々指を酷使させているような人にとっては救世主になる可能性も感じます。
一体型スペーサーの+10%の静音効果はその数字の割に大きく感じ、体感でノイズが半分になったように感じるといっても過言ではありません。
Macのキーボードには画面の明るさ・音量、再生・停止、早送りなどのマルチメディア機能がありますが、ファンクションキーをそうした用途に使うためのFnキーと、「Function機能切り替えキー」の二つが付いています。
「Function機能切り替えキー」は押すたびに切り替わるトグル動作(オルタネイト動作)、Fnは押している間だけ切り替わるモーメンタリ動作。
Functionキー本来の使い方を重視する場合はFnキーを。Functionキーは専ら画面の明るさ・音量、再生・停止、早送りのために使う場合は「Function機能切り替えキー」を利用する感じでしょうか。
Fn + Endを押すと、Win ModeとMac Modeを交互に行き来できます。
Win ModeではCommand、Optionの位置が入れ替わるなど、Windowsでの利用に最適化された配列に切り替わります。
MacはmacOSとWindowsを両方インストールし、切り替えて使うことがサポートされており、それを想定した機能です。
Win Mode中はLEDインジケーターが点灯するため、どっちのモードになっているかは視認できます。
「REALFORCE Software」を使うとAPCのキー個別設定以外にも、CapsLockとCtrlキーの入れ替え、Key Lock機能で無効にするキーの設定、インジケーターLEDの色設定などが可能です。
設定はキーボードに内蔵された不揮発性メモリに記録できるため、一度設定すれば以降再設定に煩わされることはありません。
Fn + HomeでKey Lock機能のオンオフができます。
Key Lock機能とは「REALFORCE Software」で対象に設定したキーを一時的に無効化させる機能のことです。
筆者は必要性を感じませんが、ゲーム中に押されては困るキーを設定しておくと便利かもしれません。
対象にするキーの数に限りはないので、いっそのこと全部を対象にして、Key Lockしている間にキーボードを掃除するというのはありかもしれません。
もちろんチルトスタンドも付いています。
ケーブルを左、中央、右の三方から引き出すことができるようになっています。
机上の配置に応じてケーブルの取り回しを変えられ、スッキリさせられます。
こういう使い方をする人はあまりいないかもしれませんが、iPhone、iPadとの組み合わせで使えるかどうか試してみました。
接続はApple iPad Camera Connection KitとLightning – 30ピンアダプタとの組み合わせですが、Lightning – USBカメラアダプタ、USB Type-C端子のiPad Proでも同じことかと思います。
結論としてはいずれも使えました。インストールしているOSはiOS 13.4、試用機種はiPhone 8 Plus、9.7inch iPad Pro。
音量調整、バックライトの輝度、メディアコントロールなども有効です。
再生/一時停止、早戻しが有効なので、テープ起こし、トランスクライバー用途で威力を発揮するかもしれません。
何度も繰り返し言及したように、「REALFORCE TKL for Mac PFU Limited Edition」(PFU)はキー押下圧がHHKBと同じ45gなだけで、機能面はオリジナルの「REALFORCE TKL for Mac」(TKL SA)と変わりません。
欲しい人は既にキー押下圧30gのそちらに手を出しているような気もしますが、REALFORCEシリーズには目もくれず、HHKBを愛し、長年使い続けてきた人の目に止まることがあれば、HHKBにはないAPCは魅力的に映るかもしれません。
実際、1.5mmで使い始めると段々軽快に感じてきて、入力スピードが徐々に加速する感覚があります。
このキーボードを極めると、キーを底まで打たず寸止めで済ませ、キー押下をロールオーバーさせながら、つまり一つのキーを押し終わる前に次のキーを打ち始めることになるのだろうと思います。
さながら、 忍者が水蜘蛛で水面を歩くかのようですが、そのようにタイピングできたなら、さぞかし気持ちがいいことでしょう。
筆者に現状そんなことができるわけではありませんが、結構その気になってしまいました。
REALFORCEを使いこなすプロのキーパンチャーは、キーをなぜるようにタイプするというような話を聞いたことがあります。キー押下圧45gは、素人がその領域に近づくのを助けてくれるような予感があります。
一体型キースペーサーはキーストロークのショート化効果もさることながら静音効果が素晴らしいので、HHKBの代替という考えに囚われず一度試してみる価値はあります。
仕事環境の変化などでHHKBでなくてもよくなった人がいれば、当シリーズを選択肢に加えてみるのは面白いのではないでしょうか。
なお、HHKBに慣れているとEscキーがとても遠く感じます。これは恐らくすべてのHHKBユーザーが感じることだと思います。
この点は心に置いて購入計画を立ててみてください。