ヒートベッドについて

KINGROON KP3Sのヒートベッドは大きさ180mm x 180mm。

アルミ製のヒーターの上に磁気シートが貼られた構造。

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その上に裏面にマグネットが貼られた樹脂製の磁気ビルドステッカーを置いて使うようになっている。

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純正の樹脂製磁気ビルドステッカーの使い勝手

純正の樹脂製磁気ビルドステッカーは、かなり食い付きがいい。造形物をスクレイパーで剥がすのがちょっと大変なぐらいだ。

梨地の表面は造形物の底面がマットに仕上がりいい感じ。

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ただし、攻めたレベリングをして樹脂製磁気ビルドステッカーの表面に擦り付けるように樹脂を押し出してしまうと、どうやっても取り除きようがなくなる。

その上に何度も印刷していると徐々に造形物に転写されていくが、同じ色のフィラメントならまだしも、違う色のフィラメントを使う場合に底面に汚れとして付いてしまうのでやっかい。

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従って、レベリングは甘めのところから始め、攻めすぎにならないように注意すべきだ。

平坦度はイマイチで、中央が盛り上がる傾向があるようで、周囲に合わせてレベリングすると中央部分が攻め気味になり、中央に合わせてレベリングすると周囲がスカスカになるということに悩むことになる。

ベッドいっぱいの造形をしようとすると、これが響いてくる。

この問題を解決するためにベッドの平坦度を求めるのは的を射ているが、3DTouchを導入してオートレベリング、メッシュレベリングをすることでもファーストレイヤーの定着が改善されることは覚えておきたい。

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なお、純正以外の3D Touchは純正のファームウェアで動かない可能性があるので、純正を買っておくに越したことはない。

KINGROON KP3Sは3D Touchを使わないマニュアルメッシュベッドレベリングにも対応している。この方法でも、ベッドの定着を改善できる。

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樹脂製磁気ビルドステッカーの耐久性は良くなく、そんなに使わないうちにダメにしてしまうことが多い模様。それにしては2,000円は高く感じる。

樹脂なので造形物がなかなか剥がれないときにも強引なことができないし、一度の造形で荒れた表面は、次なる造形物の底面に痕跡を残す傾向がある。

筆者もその例に漏れず、初っ端にPETGを印刷したところ、特に攻めたレベリングでなかったにもかかわらず、スカートとして付けたものが取れなくなって使用を諦めた。

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ABSの造形に使うためにヒートベッドを110度にすると、樹脂製磁気ビルドステッカーがめくれ上がってきてしまうことがあるそうだ。

高温系の樹脂に使うとトラブルサムなため、純正の樹脂製磁気ビルドステッカーはPLA専用と考えておいた方がいいかも?

KINGROON Official Storeの画像によれば、このビルドステッカーは80度以下で使えとのことだ。特にPETGは使ってはいけないとも注意書きがあった。

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日本のAmazonでスペアを買うことができる。

樹脂製磁気ビルドステッカーはヒートベッドに磁力でくっついているだけなため、PLAの造形物を次々量産するような場合には、これを2枚用意し交互に使用すれば、ベッドが冷えるのを待たずに途切れなしに造形できて効率がいいだろう。

純正ガラスプレートの使い勝手

日本のAmazonやAliExpressで純正のガラスプレートが販売されている。

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強化ガラスの厚さは3.8mm。ANYCUBICのUltrabaseのようなディンプルコートが施されており、定着がよくなるよう工夫がなされている。

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樹脂製磁気ビルドステッカーのように、造形物の固着による破壊的な変化に怯えることがなくなり、心が安定する。

80度以上の使用にも耐えるが、ヒートベッド上に貼られた磁気シートを残したまま少なくとも80度以上で使っている(70度なら大丈夫という保証はない)と、ガラスプレートと磁気シートが固着してしまうため、高温での使用を予定しているなら磁気シートを剥がしておかなくてはならない。

KINGROONのロゴ入りのつもりで買ったが、親会社のKee Pangから筆者が購入したものにはロゴが入っていなかった。

Kee Pang販売分には専用の固定用クリップが付いている。このクリップはベッド表面に出る爪の突起が小さいので、ノズルを引っ掛けにくい。

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ベッド端に爪が出た構造のANYCUBIC MEGA-Sでは、ノズルが爪を引っ掛けることは全くないが、実は210mm x 210mmの造形スペースに対し、ベッドは240mm x 220mmの横長。

造形スペースの外に爪があるので引っ掛けることはないという因果関係になっている。

KINGROON KP3Sの場合、180mm x 180mmと一回りベッドが小さい上、MEGA-Sのような「空き地」がないため、筆者の経験ではノズルがクリップを引っかけて弾き飛ばすことが多かった。

Kee Pangのガラスプレートに付属するクリップは単体でも購入可能だ。

ガラスプレートの裏面には樹脂製磁気ビルドステッカーのような磁気シートは接着されていないため、クリップが必要になるというわけだ。

当然、そうやって固定してしまう以上、樹脂製磁気ビルドステッカーのように取っ替え引っ替えしたりが面倒で、事実上できない。

平坦度は樹脂製磁気ビルドステッカーより当然高く、レベリングの結果はこのガラスプレートの方が良くなる。

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なお、筆者はなりゆきでベッドギリギリを攻めるパーツクーリングファンシュラウドを使用しており、またBLTouchを導入してオートレベリングをするために毎回ベッド全面を走査する都合上、ベッド上の突起が許容できず、現在はガラスプレートの固定にカプトンテープ(耐熱性のあるセロテープ)を使用している。

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中国製と思しきカプトンテープには偽物が混じっており、消しゴムをかけると色が取れたり、半田ゴテであぶると溶けてしまう偽物があるそうだが😓、筆者がHoryKu(ホリーク)という業者から買ったものは大丈夫だった。

ダイソー、セリアにある100円の鏡を流用する

ダイソー、セリアにはKINGROON KP3Sでガラスプレート代わりに使える鏡が売っている。

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純正ガラスプレートを使う前段階に、樹脂製磁気ビルドステッカーの問題をとりあえず回避するための選択肢として有用だ。

セリアで売っているもののサイズは240mm x 177mmで、180mm x 180mmのKINGROON KP3Sのヒートベッドピッタリというわけではないが、鏡の後ろ側がヒートベッドから飛び出るようにセットすれば、そのまま使うことが可能だ。

筆者の設置場所は横にスペースがないため横向きに設置する発想がなかったが、横方向に長い向きで使うことももちろん可能だ。

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左右が1.5mmずつヒートベッドより足りず、縦は60mm後ろに突き出すわけだ。

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ダイソーで売っているもののサイズは18cm x 24cmとなっているが、モノとしては同じではないかと思う。

この鏡の固定には、セリアで入手したクリップを分解したものを使用した。

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この爪を取り付ける場合は、ラジオペンチを使い、最初に鏡側にひっかけ、ラジオペンチでこじ開けながら最後にアルミヒーターにひっかけるようにする。

順序を逆にすると鏡の端が欠けるだろう。

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平坦度は高くなく、依然中央が高くなることに悩まされ、そして厚さは1.7mmと薄く、脆いガラスであるため、ベストとは言い難いが、筆者はこれのサイズ違いをANYCUBIC MEGA-Sで愛用している。

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以前ANYCUBIC MEGA-Sのベッドのガラスが割れて交換品を求めたことがある。

しかし、ちょうどその時期は日本のAmazonやAliExpressで交換用のベッドが品切れしており苦労したため、日本中どこででも110円で入手できる安心感は素晴らしいと感じた。

ガラスそのものゆえに基本的には表面が劣化せず、造形物の底面が綺麗に仕上がるため、気に入っている。

ただし、高温系の樹脂を使う場合、造形物の底にガラスが固着し、剥離時に表面をえぐってしまうことはある。これは、ガラスベッドに共通で起きうるアクシデントだ。

表面にでこぼこがない分接地面積が増えるからか、スカートを付ければエンクロージャー内なら、そして小さめの造形物なら、スティックのりなしでのABSの造形にも問題が出ていない。

ちょうどいい記事が上がっていた。ツルツルに見えるガラス、実は表面はデコボコしているそうだ。

とはいえ、ツルツルのガラスで定着に問題が出る場合もあろうかと思う。その場合は、100円で入手できる「ジェネリックビルドシート」を試してみてはいかがだろうか。

ガラスカッターで余分をカットし、177mm x 180mmに仕上げる

ダイソー、セリアで入手できる240mm x 177mmの鏡を流用すると、ベッドの後ろに60mm飛び出すことになる。

棚置きする都合上邪魔になったので、筆者はガラスカッターで余分なところを切断した。

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これを読んだ90%の人は自分にできると思わないだろうが、筆者はガラスを切断した経験が0の状態から実行し、成功させた。

実行に必要なのはガラスカッターと、カットオイル、ガイドになる雑誌のようなものの三つだ。

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筆者はカットオイルにはCRC 5-56を使用、ガイドにはB4判の雑誌を使った。

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手順としては以下のようになる。

  1. 机の上に鏡を置く
  2. 鏡の切断予定部に油性ペンなどで印を付ける
  3. 普通のカッターと異なり、ガラスカッターの歯先は厚みのある金属のブロックで挟まれているため、ガラスカッターに当てるガイドは、ブロックの厚みの分、ずらす必要がある。その厚みを測って、切断する部分とは別に、ガイド用の印も付けておく
  4. 高さのある雑誌の背の部分を切断する方に向け、ガイドとして鏡の上に置く
  5. 顔を鏡の面に近づけ、ガラスカッターの刃先が付けた印の上に乗るよう雑誌の位置を調整する
  6. ガラスカッターの刃先にCRC 5-56を吹き付ける
  7. ガラスカッターに体重を乗せやすいように立ち上がる
  8. ガイドとなる雑誌を動かないように押さえる
  9. 切り始めの上端にガラスカッターを乗せる。力を加えたときに鏡の上からガラスカッターが落ちるとコトなので、上端から1mmほど下を開始地点にしてもいいと思う
  10. ガラスカッターが左右に倒れないよう、垂直を保つことを意識しながら、力を加えてから下に動かし始める。垂直を保つのは左右方向に対してだけで、前後方向には垂直でなくても構わない
  11. できるだけ等速で動かすように、ガラスカッターにかける荷重も変わらないように意識する
  12. しっかりガラスに刃が入っていると、ジィィィィ!というささくれ立った音がして、刃先からも振動が伝わってくる。刃が入っていないと、ツルーーっと上を滑っている感触になる
  13. もし、ツルーーっと鏡の上を滑った感覚が部分的にでもあったら、もう一度切る。二度切りはするなという教え方をしているガイドがあるが、筆者は二度切りを推奨する。ツルーっと滑った部分は、後で折り取るときに、カットしたい部分を反れて曲がって折れてしまうためだ
  14. 切れ目を入れた部分を上にし、幅のあるペンチなどで端を掴み、ゆっくり力をかけてハの字に折る。ある瞬間に亀裂が走って一気に折れる
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事前の準備: ガラスカッターにCRC 5-56を注油
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緊張の一瞬: 開始地点で一番緊張が走る。上に刃先を落として出鼻をくじかれないよう、1mmほど少し端から離した辺りから始めていいと思う

ガラスカットの練習

筆者は、本番のカットをする前に練習をすることを推奨する。

しかし、何も練習のために余分に鏡を買っておく必要はない。

使わない余白の部分を短冊状に切ることで十分練習ができる。

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  1. 椅子から立ち上がり
  2. ガラスカッターを垂直に保ち
  3. 上端から体重をかけつつ等速に切り下ろす

そして、刃が入ったときの「ジーーー」という音と振動が、どんな力加減をすれば発生するかを体で覚える。

余白を切り終えるころには、本番に挑む自信が出てくるはずだ。

1枚100円なのだし、余白を切り尽くしても自信が持てなければ、もう一枚買ってきてから本番に挑むことにして、自信が持てるようになるまで練習すればいい。

筆者はガラスカットができようになると今後3Dプリンターに使うガラスプレート調達の自由度が飛躍的に高まり、挑戦する価値があると考えた。

PEIスプリングボード(ステンレススチール板)の使用

AliExpressでは、Original Prusa i3 MK3Sなどで使われるPEIスプリングボード(ステンレススチール板にPEIを貼ったもの)が販売されており、KINGROON KP3Sに適合する、180mm x 180mmのものも売っている。

KINGROON純正品も登場した。磁気ベースの耐熱温度は130度で、100度での常時使用に耐える。

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ENERGTIC 3Dのものは、テクスチャあり、テクスチャなしから選べ、磁気ベースには140度の耐熱性があると明記されている。

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ヒートベッドに元から貼られている磁気シートは80度の高温に耐えられないが、ENERGTIC 3Dの磁気ベースに貼り替えれば、80度以上に温度を上げる必要のあるフィラメントを使う場合でも、磁気ベッドの利便性を諦める必要がなくなるわけだ。

ステンレス製のプレートの特徴として、ガラスと違って熱による膨張が大きいことが挙げられる。即ち、よくレベリングが狂う。

従って、オートレベリングの併用は前提になる。ベッドを印刷時と同じ温度に温めてからオートレベリングをやるわけだ。室温の影響も大きいだろう。

金属製であることは、オートレベリングにインダクティブセンサーが使えることも意味する。

Original Prusa i3 MK3Sがまさにそうなっており、採用されている温度補償付きインダクティブセンサーP.I.N.D.A. v2はベッドが金属でないと使えない一方、非接触式かつ非常に高速に動作する。

KINGROON KP3Sでこの金属プレートとP.I.N.D.A. v2を外部マザーボードと共に使う事例があるが、標準のMKS Robin Nano互換ボードにP.I.N.D.A. v2が接続できるかどうかは筆者には分からない。

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ともあれ、PEIスプリングボードはオートレベリング環境さえ整えれば、純正の樹脂製の磁気ビルドステッカーの欠点を回避する一方、磁気による固定のメリットを享受できる有用な選択肢になる。

カットしてもらったフロートガラスを使う

筆者は未着手だが、フロートガラスをガラス屋さんで切ってもらうオーダーメイドの選択肢もある。

この場合に選ぶべきなのは、歪みの出る強化ガラスでなく、普通のフロートガラス。

平坦度が高く、歪みの少ないフロートガラスはヒートベッド用に有用とのことだ。

オーダー時に厚さや断面の加工を選べる。

これまでに何度か書いた通り、結局ツルツルのガラスがいいのでは? という持論を持つ筆者は、その極北に位置するものとして、いずれ試してみるつもりだ。