なぜKP3Sの造形品質は高いのか

KINGROON KP3Sは、3Dプリンター歴の長そうな人から頭ごなしにその価値を否定されがちだ。

3Dプリンターに詳しいと、KINGROON KP3Sの片持ち構造を不安に感じるのだ。

そもそも、20,000円からの超格安3Dプリンターの質を議論するのすら馬鹿馬鹿しいと思っても無理もない。

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筆者もかつてはそういう考えだった。

直交式の3Dプリンターは、大きく門型と片持ち型に分けられる。

メインストリームとなっているのは、門型の方だ。

ノズルを左右に動かすX軸を、2本の柱で支えた門型の構造には安定感がある。

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KP3SのようにX軸を支える柱が1本だと、振動や、重量によってフレームや造形物に歪みが生じるという先入観があるのだろう。

しかし、門型の3Dプリンターを4台、KINGROON KP3Sを2台所有するに至った筆者の見解はそれとは異なる。

(ちなみにCoreXYタイプの3Dプリンターも2台所有する。1台は自作機)

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KINGROON KP3Sの造形品質はそれらを上回るかそれに匹敵する。

なぜこのようなことが起こるのか?

X軸が1枚の鉄板で出来ている

一つは、X軸がL字型に折り曲げた1枚の鉄板から出来ているということが挙げられる。

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門型だと、いろいろな部品を組み合わせてX軸の構造を作っているところ、KP3Sの場合はL字型鉄板1枚なのでこれは明らかに強い。

X軸関連パーツが、全部1枚の鉄板の上に乗っている。

タイミングベルトにある程度張力をかけて精度を出しているので、3Dプリンターはいわば弓のようになっている。

ベルトが正方向に動くか、逆方向に動くかで力のかかる場所が変わるため、強度が足りないと出力品質に影響が出る。

1本の木で出来ている弓と、いくつもの部品をボルトで繋ぎ合わせた弓、どちらが素直な性能を発揮すると思うだろうか?

直線運動拘束機構をリニアガイドレール1本で済ませている

直線運動の拘束をリニアガイドレール1本、1個で行っていることも挙げられる。

X軸はもちろん、Y軸のベッドもまた、リニアガイドレール1本、1個で直線運動の拘束を行っているのが面白いところ。

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180 x 180のベッドの裏面中央に小さなリニアガイドが取り付けられ、それだけでベッドを支えていることに不安を感じるが、実はこれがいいのではないかと考える。

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リニアシャフトの場合断面が丸いので、軸に沿った回転を止められず、使う場合必ず2本セットになる。ANYCUBIC MEGA-SはXYZいずれの軸もリニアシャフトを2本ずつ使っている。

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3Dプリンターを自作・調整すると分かるが、リニアガイドレール、リニアシャフトが1本のときはスイスイ動くものが、2本になると途端に挙動が複雑になり、渋くなりがちで調整が難しくなる。

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リニアガイドレール1本で済ませると、リニアガイドレール自身の性能以外にそれを阻害する要因がなくなるために良い結果につながっているのではないかと考えた。

構造のシンプルさは、構造の高度さを超えて、3Dプリンターにおいていい結果を出す条件の一つになりうるという評価眼は持つべきだ。

小型軽量である

X軸が1枚の鉄板で出来ているのも、X軸、Y軸がそれぞれ1本1個のリニアガイドレールでできているのも、KINGROON KP3Sが小型ゆえだ。

大型になると、この構造を採用できなくなる。

造形スペース220x 220mmクラスの門型3Dプリンターだと、重量は15kg程度になる。

KINGROON KP3Sは180 x 180mmクラスで重量は6kg。

本体が大きく、重くなると、自縄自縛になるのではないか。

この相関関係は所有の400 x 400mmクラスのANYCUBIC Chironと220 x 220mmクラスのANYCUBIC MEGA-Sとの間でも見られ、MEGA-Sの造形品質はChironより高い。

3Dプリンターが小型であるほど品質が高くなる傾向にあることを体感している人は多いのではないだろうか。

KINGROON KP3Sの出力品質が高いのも、結局はそこに起因しているのだと考えられる。