KINGROON KP3S(以下KP3S)のエクストルーダはダイレクト式を採用している。
エクストルーダには、大きくボーデン式とダイレクト式がある。
シェアが大きいと思われる、
- Creality Ender-3
- ANYCUBIC MEGA-S
- FLASHFORGE Adventurer3
- Prusa MINI+
などはボーデン式。
- TRONXY H5SA
- Creality Ender-5 Plus
などのCoreXY式の3Dプリンターも大概ボーデン式。
- Prusa i3 MK3S+
- QIDI TECHの3Dプリンター全般
などがダイレクト式のエクストルーダを搭載した代表的な3Dプリンター。
市場にある3Dプリンターの体感で8〜9割がボーデン式で、ダイレクト式は少数派だ。
低価格帯ではKINGROON KP3Sが異色の存在となっている。
用語の整理
エクストルーダという用語は3Dプリンター界隈では曖昧な使われ方をする。
説明上、ここではエクストルーダを樹脂を押し出すシステム全体を指すものとし、MK8、Titan、BMGなどの、パーツ単体でエクストルーダと呼ばれるものは区別のためにフィーダと呼称する。
ダイレクト式エクストルーダとボーデン式エクストルーダの違い
ボーデン式
- フィーダがX軸の端(CoreXY式の場合は外形のフレーム)に固定され、ヘッドと一緒に動かない
- ヘッドには、ホットエンド(ヒートシンク、ヒーター、ノズル)だけがある
- フィーダとヘッドとは長いテフロンチューブでつながれる
ボーデン式のメリット
- X軸上を左右に動くヘッドにはホットエンドしか乗っておらず、離れた場所に固定されたフィーダの分軽いため、ヘッドが重くなることで発生しやすくなるゴーストなどの造形不良が緩和される
- 軽量な分スピード耐性が相対的に高くなり、構造上X軸、Y軸を高速に動かすことができるCoreXY式3Dプリンターにおいてメリットを活かす選択肢になりやすい
- フィーダとホットエンドが分離式であることで、ホットエンドのメンテナンスがやりやすくなる
ボーデン式のデメリット
- フィーダとホットエンドが遠いため、フィーダによるフィラメントの送り出し、引き戻しの応答が鈍くなり、フィラメントのキレが悪くなる。特にTPU、TPEなどの軟質のフィラメントではその傾向が顕著になる
ダイレクト式
- ヘッドにホットエンド(ヒートシンク、ヒーター、ノズル)、フィーダとエクストルーダを構成するすべての要素が乗る
- ホットエンドとフィーダとは、通常極短のテフロンチューブでつながれる
ダイレクト式のメリット
- ヘッドにフィーダまで搭載され、フィーダとホットエンドが最短で結ばれているため、フィーダによるフィラメントの送り出し、引き戻しのキレが良くなり、造形品質が全体的に向上する。特にTPU、TPEなどの軟質のフィラメントではボーデン式との差が顕著になる
ダイレクト式のデメリット
- 一体化されたフィーダの分ヘッドが重くなるため、重さに起因したゴーストなどの造形不良が発生しやすくなる
- ヘッドが重くなる分、ボーデン式と比較してスピード耐性が下がる(※1)
- 大概フィーダにホットエンドが挟み込まれ、ネジで固定される構造になるため、メンテナンス時にヘッド全体を分解する羽目になり、メンテナンス性が悪くなる(※2)
※1: Sherpa mini、Orbiterのような軽量なフィーダを使用すれば、影響を軽減可能。フィーダのステッピングモーターだけを分離させた、リモートエクストルーダという方式もある
※2: Bear Extruderのようにフィーダを分解せずにホットエンドを取り外せる構造のものもある
KINGROON KP3Sにおける実態
ANYCUBIC MEGA-S、Chironといったボーデン式の3Dプリンターを経てダイレクト式のKINGROON KP3Sを使用した筆者は、フィラメントの押し出し制御が精密で造形品質がグッと上がったと感じた。
組み立てを必要とするプリント部品の嵌合に手こずらされることもなくなった。
ダイレクト式で気になるスピード耐性については現状40mm/secで使っているが、ANYCUBIC MEGA-S、ChironでもKINGROON KP3Sでも主に40mm/secでプリントしていたため、特にデメリットを感じなかった。
ヘッドの重さに起因するゴーストなどの造形不良も40mm/secで使っている限りは問題ない。
ちなみに、ファームウェアをKlipperにすると高度な加速度制御によってゴーストを軽減できる。