3Dプリンターを修理したり改造したりするときに、避けて通れないのがコネクターの圧着作業だ。
KINGROON KP3Sでは、冷却ファンの交換をする際にこの作業が必要になってくる。
コネクターの圧着などやったことがない人が大半ではないだろうか。
しかし、正味の話、半田付けなど他の方法より圧着の方が簡単だ。ただし、道具さえあれば。
3Dプリンターと縁の深いコネクターといえば、何といってもJST PH(小)、JST XH(大)だろう。
コネクターとその端子は、セット品がかなり安く売っている。
JST PH
ステッピングモーターに使われている6ピンのJST PHはこのようなセットに入っていないが、安価に入手できる。
JST XH
これらは中国製で、秋月などで売っているJST純正のPH、XHとは若干形状が違っていて、混ぜるとやや面倒なことになる点に注意だ。しかし3Dプリンターに使われているJST PH、XHは漏れなく中国製なので、JST純正を混ぜると面倒といった方が適切か。
このほかに、圧着工具が必要となる。
以前はこの圧着工具、数万円〜十万円出さないと買えず高嶺の花だった。
しかし、最近は中国製の工具がとてつもなく安く売っている。
しかも特に致命的な問題もない。高額なJST純正工具と比較すると差はあるということだが、3Dプリンターの改造といった用途でその差が問題になるほどではないというのが実際のところだ。
筆者はIWISS SN-01BMを使っているが、JST PHとJST XHの両方に対応しており、大変楽に圧着できて手放せない。
IWISS SN-01BM
JST PH端子の圧着方法
ワイヤーストリッパーなどで圧着する配線の先端の被覆を剥く。
剥く被覆は大体この程度だ。ちなみに、剥いたところを半田で濡らして固めるようなことはやらない。却って切れやすくなる。
ラジオペンチなどで配線先端の被覆をつぶす。JST PHは小さい端子なので、被覆の部分がひっかかることがあるためだ。
ピンセット、先の細い精密ラジオペンチのようなものでJST PHの端子を写真のように掴む。
正にこの初手こそがノウハウだ。指でやろうとすると端子をこっちに飛ばし、あっちに飛ばしと膨大な時間を浪費する。
圧着工具IWISS SN-01BMを写真の向きで握る。
ピンセット、先の細い精密ラジオペンチで掴んだJST PHの端子を手前側の細い窪みに押し込む。
押し込む向きは、「Λ」のように開いた方が下だ。
反対側から見ると、このように頭の部分だけを刃先から外に出している。頭の部分を押しつぶしてはいけないからだ。
刃先から外に出しているのは、画像の赤枠で囲んだ部分だ。
IWISS SN-01BMの持ち手を握り込んで、挟み込んだ端子に触れるところまでラッチをカチカチ言わせる。
IWISS SN-01BMに挟んだ端子に、先を剥いた配線を差し込む。潰して平べったくした被覆の向きを揃えて差し込むと、引っかからずに入るだろう。
手前側の端子が被覆を捉える程度に差し込む。
IWISS SN-01BMを最後まで握り込んだら出来上がり。手前部分に被覆をガッチリ捉えさせるのがミソだ。
JST XH端子の圧着方法
ワイヤーストリッパーなどで圧着する配線の先端の被覆を剥く。剥く被覆は大体この程度だ。JST PHのときのように、ラジオペンチで被覆を潰す必要はない。剥いたところを半田で濡らして固めるようなことはやらない。却って切れやすくなる。
JST XH端子は、被覆を圧着する部分のハの字の開き方が大きい。
このままだと圧着工具IWISS SN-01BMに差し込むときにやりづらいので、事前にラジオペンチなどで少し閉じる。
今回は大体平行になるようにしたが、もう少し開いていてもいいかもしれない。
JST PHと同様にピンセット、先の細い精密ラジオペンチのようなものでJST XHの端子を掴み、圧着工具IWISS SN-01BMの外側の溝に押し込む。押し込む向きは、「Λ」のように開いた方が下だ。
圧着工具IWISS SN-01BMの持ち手を握り込み、ラッチをカチカチ言わせながら端子と触れるところまで閉じる。
反対側に回り込んで確認。端子の頭の部分は、刃の外側に出して潰さないようにする。
配線を挟んだ端子に差し込む。手前側が被覆を圧着できるように、差し込み加減を調整する。
圧着工具IWISS SN-01BMの持ち手を最後まで握り込んだら出来上がり。
圧着ができないボックスコネクタ側はどうするか
本来基板に半田付けするボックスコネクタの方は、圧着ができない。
その場合は、普通に半田付けすることになるが、絶縁・補強の意味で熱収縮チューブをはめておくといい。
JST PH、JST XHの端子の抜き方
既存の端子の配線の極性が逆になっていて、圧着まではする必要がないが、入れ替えさえすればいいというケースが結構ある。
そんな場合は、いったん端子をコネクタから抜く必要がある。
JST PHの端子の抜き方
JST PH端子は管楽器のリード、2ストエンジンのリードバルブのような構造になっていて、カッターでリード部分を持ち上げながら抜けば、端子の返しの部分をスルーさせて抜くことが可能だ。
JST XHの端子の抜き方
やっかいなのはJST XH端子の方だ。JST PHのようなリードバルブ状の構造になっていない。
筆者が色々試したところでは、端子の返しの部分を一旦完全に押し込んでしまうのがいいようだ。
まずは配線をコネクタ側に押し込んで、端子の返しの部分が露出するようにする。
撮影の都合上指を離しているが、配線を押し込んだまま、端子の返しの部分を鋭利なラジオペンチのようなもので不可逆な状態にまで押し込んでしまう。そうすると、スルっと抜けるようになる。
JST XHの場合の本番はここからだ。
返しの部分を押し込んでしまった端子は、もちろんそのままではコネクタに戻しても返しがないのですぐ抜けてしまう。
そこで、返しの復元をする。写真の位置から鋭利なラジオペンチのようなものを差し入れて、返しの裏側から押す。
すると、抜くときに押し込んでしまった返しが外側に出てくる。この段階では取っ掛かりさえつかめればOK。
今度は端子の外側から、返しの部分を起こす。これで返しの復元完了。