KINGROON KP3Sの冷却ファンはうるさい。
居室にKINGROON KP3Sを設置する場合、大概の人はそのことを不満に思うだろう。
そこで考えるのがファン交換による静音化だ。
場所 | 形式 | サイズ | 交換推奨ファン | 記事 |
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電源ユニット | 軸流ファン | 6015 | 静音タイプ 12cm PC軸流ファン | ここ |
ヒートシンク ファン | 軸流ファン | 3010 | 静音タイプ 4010軸流ファン | |
パーツクーリング ファン | 軸流ファン | 3010 | 5015もしくは4020 ブロアファン | |
CPUファン | 軸流ファン | 4010 | 静音タイプ 4010軸流ファン | ここ |
Thingiverseに改造用のパーツが多種アップロードされている。このどれを選ぶかが悩ましいのだが。
KINGROON KP3Sの電源は24Vである一方、静音の冷却ファンは大概PC用なので12V動作。
例えば筆者が使っているKINGROON KP3Sで使っているファンは以下だ。AINEX OMEGA TYPHOONはほとんど存在を無視できるほどの静音なので大変効果がある。
5015ファンはとりあえずTOOHUIのを買ったが、5015ブロアファンとしては後述する大変静かなFYSETC(Toaiot)のものがおすすめだ。
4010軸流ファン
5015ブロアファン
ここに24V電源で12V動作の冷却ファンを動かすニーズが出てくる。
電源ユニットとCPUファンについてはそのことを含めて記事にした。
残すヒートシンクファンとパーツクーリングファンの電源を12V化するためには、本体内にステップダウンDC-DCコンバータないし抵抗分圧回路を設置するのがいいだろう。
筆者は長らくエクストルーダー辺りにぶら下げていたのだが見苦しいし、ブラブラしているものを始終動かしているといつか断線が起きそうだ。
ヒートシンクファンとパーツクーリングファンは、マザーボード上の以下のコネクタに接続されている。
このコネクタの形状はJST XH。このコネクタの扱いについては以下に記事を書いておいた。
ヒートシンクファンとパーツクーリングファンがつながるコネクタにまずステップダウンDC-DCコンバータ、ないしは抵抗分圧回路を接続して24Vから12Vに降圧し、しかる後に送り出すということをすれば(下図右)、エクストルーダーの周囲に余計なものをぶら下げる必要がなくなってスマートだ。
早速こしらえたものがこれだ。
両端がJST XHの雌雄で中継ケーブル状になっており、ファンへのコネクタの間に挟むことができる。
具体的な接続は以下のようになる。DC-DCコンバータとファンとの接続が作図の都合上微妙になっているが、+は赤、-は黒へ接続ということでそれ以上の含みはない。
このDC-DCステップダウンコンバータは出力電圧が可変なので、ファンをつなぐ前にOUT側にテスターをつないで12Vに合わせておく必要がある。
筆者は実際には出力電圧が可変なのをいいことに、AINEX OMEGA TYPHOONの方は自己責任で多少定格より電圧を上げて動かしている。
テスターの持ち合わせがない場合は、トリマーを反時計回りに回し切り、動かしながら時計回りに回して様子を探るといった感じになるだろうか。
みな既製品が買えるDC-DCコンバータに流れて抵抗分圧回路を採用しないと思うが、筆者は定速動作のヒートシンクファンにはDC-DCコンバータ。PWM制御のあるパーツクーリングファンには抵抗分圧回路を入れて降圧した。
抵抗分圧回路については以下に書いておいた。
DC-DCコンバータの上流でPWM制御をするとDC-DCコンバータ自体がチーーーと鳴いてノイズ源になるし、DC-DCコンバータの入力側でPWM制御していいとは思えないからだ。
PWM制御のあるパーツクーリングファンの方にDC-DCコンバータを使っても機能することは機能する。そうしていいものかどうかは筆者にはよく分からなかった。
DC-DCコンバータ、抵抗分圧回路を本体内に内蔵するに当たり絶縁の必要があるが、この基板が入るほど太い熱収縮チューブを持っている人も少ないと思うので、熱収縮チューブ代わりの中継ケースを作成しておいた。
本体に内蔵しつつ、このケースに入れればDC-DCコンバータからのチー音対策になるかも、とも考えた。
設置イメージとしては以下のようになる。(ちょっと配線が短すぎた)
FYSETCの24V 5015ファン
AliExpressユーザーの間では信頼のブランドとして定着しているFYSETC。
Original Prusa i3 MK3S、Original Prusa Miniのクローン、TMC2208モジュールなどでお世話になった人も少なくないだろう。
そこから出ている5015ブロアファンをたまたま使う機会があったが、これまでに使ったどの5015ブロアファンより静かだった。
通常5015ブロアファンからは「フィーーーン」という甲高い音がするが、このFYSETCのものはホワイトノイズメインで耳障りな音が穏やか。
そのFYSETCの、しかもあろうことか24V動作品が日本のAmazonで売っているのに気づいた。
24V品だからDC-DCコンバータを挟む必要もなく、KINGROON KP3Sにそのままつないで使える。
2個セットということもあり値段は少しするが、パーツクーリングファン用として、これはおすすめだ。
パーツクーリングファンはPWM制御で強弱をコントロールする必要があるので、DC-DCコンバータを挟まずに済むのは好都合だ。
これがいつまで入手できるかは分からないが、これが入手できる限りはこれを使うのは最適解。
早速注文して動かしてみたが、やはり素晴らしい品質だった。ご覧の通り「フィーーーーン!」という甲高い音が全くしない。
ToaiotはFYSETCのブランドで、これをAmazonで取り扱っているLiying Innovationという業者もまたFYSETCの直営のようだ。その扱い品目や価格設定がまたどれも的を射て素晴らしく、そしてまた全品Amazonプライム対応というのも価値が高い。筆者は大変注目している。
PWMノイズ対策
KINGROON KP3SのマザーボードであるMKS Robin Nano互換のKingRoon KP3 V1.2にはハードウェアによるPWM制御がないか、ハードウェアPWMの周波数が低いようだ。
PWMは、モーターの回転数やLEDの見かけ上の明るさを制御するために、高速で出力をオンオフする機能のこと。
電圧を高くしたり低くしたりする代わりに、1周期当たりのオン時間の割合を長くしたり、短くしたりする。
PWMの周波数が低い結果何が起きるかというと、ファンを100%以外で動かしたときにPWM制御起因の可聴ノイズが発生する。
人によって感受性が異なるかもしれないが、個人的には静音ファンへの換装を打ち消すほどのノイズと感じた。
プリウスがモーターで動いているときのような音、電車のインバーター音とでもいうのだろうか。あんな感じの音がする。
これはArduinoベースのRAMPS系マザーボードにはない欠点なので衝撃を受けた。
対策には、コンデンサを入れる方法と、ファームウェアをMarlinに入れ替えて、Configuration.hのPWM系のオプションを設定する方法がある。
コンデンサの方は筆者はやっていないので詳細は割愛するが、220uF/25V程度のコンデンサをDC-DCコンバータの入力に入れるといいのではないかと思う(電解コンデンサは逆接続すると爆発するので注意)。入力を平滑化すれば、出力も平滑化されるだろう。
DC-DCコンバータのいらない24Vのファンを使う場合は、ファンの+と-の間にコンデンサを入れるということだ。
動力部品をPWMするとキーンってなりますよね…。
— Rcat999 (@Rcat999) September 11, 2020
3Dプリンタではないですが、ファンの電源に220位の大きめのコンデンサを、並列に繋いだら静かになったことがあります。よかったら試して見てください。
こんな感じです😆 pic.twitter.com/TcPEFuKFMm
— Reiya@3Dプリンター歴2年🍮 (@ReiyaSalt) January 13, 2021
筆者がMarlinにPWMノイズ関連で設定している項目は以下だ。Marlin2.0.7ではConfiguration.hにある。
公式ファームウェアではハードウェアで対処するしかないが、Marlinをインストールするなら設定しておいて損はない。
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この項目設定による静音効果を確認できる動画を作成した。
Marlinのインストール方法、このPWMノイズ対応の件について解説したページを用意した。