KINGROON KP3Sに限らず、中国製の格安3Dプリンターは「DIY」(Do it Yourself)、「Kit」をうたっているものが多い。
明示的に書いていなくとも、DIYが基本のKitだと思っておいた方がいい。
Kitの意味するところは、部品のセットというようなことだ。
メーカーから提供された部品セットの活用は、ユーザーに託されている。
金を取る以上、何ら手を煩わせられることなく、製品が少なくとも1年は完全に動作することは保証されるべきだと思って中国製格安3Dプリンター買うと期待を裏切られる。
あるメーカー製の自分の手元に来た個体が無問題だったとしても、全数が良品であるとは限らない。
製造番号がない製品もあるのだから、その品質管理体制は推して知るべきだ。
日本国内にサポート拠点がないので故障しても引き取って修理というものがなく、サポートはユーザーの主訴に基づき送付された部品を自分で組み付けるというのが基本。
つまり分解組み立てができるスキルがユーザーにあることが暗黙のうちに前提とされている。
修理のための部品の送付は、聞きおよぶ範囲では無料で対応されることが多いようだ。
サポートはこのような形でなされるので、何か不調・故障が起きたときに、根気よく自分で原因究明をし、自分で対処しないとならない。
その代わり、KINGROON KP3Sに関しては補修部品がかなり豊富に用意されている。
サポートの対応も、タイミングや方法次第で梨の礫(つぶて)ということもあり、ユーザーが無力だと立ち往生することもある。
こういうサポート体制であることに怒りを感じる人は無論少なくないだろう。
そういう人は、KINGROON KP3Sをはじめとする中国製格安3Dプリンターを買うべきでない。
一方、FLASHFORGEの製品は、日本国内に拠点を持つ代理店が担うサポート体制がその他中国製格安3Dプリンターとは一線を画している。
従って、3Dプリンターのメンテナンスも楽しみのうちと割り切れない人は、そのような会社の製品を買うべきだと筆者は考える。
3Dプリンターはあくまで造形物を作るための手段であり、その保守に時間を割かれるべきでないというのは真っ当な考えだと思うし、FLASHFORGEの製品はそういう思想に基づいていると信じる。
筆者の中国製3Dプリンターに対するスタンス
こんな高説をたれる筆者は3Dプリンターどういう付き合い方をしてきたかというと、FLASHFORGE製品のように純正部品、純正消耗品を使うことを前提とした製品には窮屈さを感じた。
FLASHFORGE製品の例えばホットエンドユニットは4,000円ほどする。
ノズルだけの交換には対応しておらず、何か不調があれば、そのユニットごとの交換となる。
人気のAdventurer3は市販の汎用フィラメントが本体側面のスプールホルダーに入らず、純正のスプールに巻き直しをするか、外部から供給する手段を模索することになる。
FLASHFORGEの製品はすべて箱型の筐体で囲われており、改造がままならない。
FLASHFORGE製品は日本国内に代理店があるが、生産は中国。しかし、中国からの並行輸入は日本の代理店の意向で止められ、日本国内では代理店を経由して購入するほかない。
一方、中国製の3Dプリンターは何もかもが自由だ。消耗品はセカンドソース品から自由に選ぶことができ、日本の代理店(?)を経由せず、AliExpressから直接買うことも可能。
消耗品はノズルが50円といったようなただ同然の値段で買え、ホットエンド丸ごとでも900円程度の格安で買える。
3Dプリンターの中核となるマザーボードであってさえ、2,000〜3,000円程度で買える。
3Dプリンターの核心は制御を担うファームウェアにあり、それはオープンソースだ。
意外と単純な機械で、汎用品を集めて完全に自作することも可能だ。ブラックボックスは存在しない。
このような事実関係から、筆者は単一のメーカーに依存することにあまり価値を見出しておらず、自由さ、コストの安さをこそ望んだ。
その一方、多少メーカーの対応がクソでも、サポートが切れても、メーカーのサポートに頼らず維持する覚悟を持っている。
こうした背景からKINGROON KP3Sに価値を見出しているため、潜在的にFLASHFORGE製品を望んでいるユーザーが、間違ってKINGROON KP3Sを手にしないかと心配している。
かなりネガティブなことを書いたが、KINGROON KP3Sは問題なく使い始められる個体がほとんどだとは思う。
しかし、筆者自身、筆者の知り合いという範囲でもトラブルは出ているので、ここで書いたようなことと無縁でいられるほどの品質管理がされていないことは事実だろう。
KINGROON KP3Sを選ぶ際は、ここで書いたような感覚を持っておくと失望がないはずだ。
見聞きした具体的な不具合事例は以下のページにできるだけ集めておくつもり。