KINGROON KP3S 2.0改造事例

筆者が入手し、しばらく積んでいた(死蔵していた)KINGROON KP3S 2.0を改造し、利用開始したので事例として紹介。

KINGROON KP3S 3.0でも適用できる部分はあるだろう。

KINGROON KP3S 2.0は、KINGROON KP3S 1.0と比較して静音化されている印象を受けたが、静音化改造をしたKINGROON KP3S 1.0と比較するとファンがうるさく我慢ができなくなったので、結局KINGROON KP3S 1.0に施した静音化改造メニューを適用することにした。

KINGROON KP3Sでうるさいのはファンだけなので、静音化改造をすると本当に静かな3Dプリンターになる。

専属のドライボックスの制作

KINGROON KP3S 2.0専用に使うドライボックスを制作してベタ付けした。

最近周辺環境の整備が大事だと感じ、ドライボックスを連続して4台、全7台作ったため、量産を苦痛に思わない作りやすさ、使いやすさをアップさせるリニューアルを実施した。

Titanエクストルーダー改造

TitanエクストルーダーにPTFEチューブを差し込めるように標準のカラーを外し、改造したものに交換。

カラーを抜いたままだと直径6mmの穴が開いてしまうので、そのような処置が必要。

PTFEチューブアダプタのSTLファイルは以下に置いた。実際はフィットするものを作るのには現物合わせが必要だと思われるため、編集のためにSTEPファイルも同梱した。

3.0付属のTitanエクストルーダーはちょっと仕様が違い、無改造でPTFEチューブが差し込めるようになっていた。

ケーブルの養生

KINGROON KP3Sはケーブルの固定方法がよくなく、そのままにしておくとケーブルが切断される可能性があるので養生。

今回はproko氏のケーブルガイドを使って養生。タイラップが通してある穴にはM3のネジが切ってあるため、ナットを使わず固定が可能。

Z軸フレームの穴塞ぎ

ネジを落としがちなZ軸フレームの穴塞ぎを実施。

最近のKINGROON KP3SのMicro SDカードスロットはスロット下の隙間がなくなっており、隙間塞ぎは必要なくなっている。

Z軸の調整

「調整可能アンチウォブルハット」を使い、Z軸の傾きを補正。

最近のKINGROON KP3SはZ軸のステッピングモーターとリードスクリューのカップリングにリジッドカプラが使われている。

フレキシブルカプラでやる必要のあった調整が不要になっているが、例によってリードナット(取り付け穴)の位置がずれており、リードナットをフリーにすると垂直に立とうとするリードスクリューを、位置のずれたリードナットが横に曲げようとする状態になっていた。

リードナットのネジを緩めただけでは垂直が出なかったため、リードナットの底にスペーサーをかましてリードナットの底を平らにし、リードナット取り付け場所を位置のずれた取り付け穴を通さないよう上にずらし、調整余地を増やして垂直を出した。リードナットスペーサーのSTLは以下に置いておいた。

それでも調整し切れなければ、「リードナット固定位置調整用アタッチメント」利用の前に、リードナット固定にM2.5ネジを使う選択肢も考えていた。

電源ユニットの改造

本体の左側後方に電源ユニットを設置するため、以下のページに書いたように電源スイッチと電源ケーブルのソケットを回転させ、左右入れ替え。

そのままだと電源スイッチがケーブルの後ろにきて使いにくいのだ。

電源ユニットを逆さまにして立てて設置するため、以下のページに書いたように高床式電源ユニットスタンドを制作。

電源のファンの静音化を実施。

今回はノクテュアのファンに手が伸びず、アイネックスのOmega Typhoon Gで妥協。結論から言うと非常に静かで問題なかった。

電源24Vに対し、Omega Typhoon Gは12V動作なので、降圧が必要になる。

KINGROON KP3Sの電源ユニットは初期型と現行型で仕様が異なり、初期型は温度に応じてファンのスピードが変化する。電源投入当初はファンが回らないようになっている。

現行型は常時定速回転になっているようで、電源投入と同時にファンが回転を開始する。

しかし、現行型でも負荷に応じてスピードが変化しないとは限らないように感じたので、DC-DCステップダウンコンバータは使わず、抵抗分圧を選択。

初期型の電源ユニットは24V動作の6015ファンが使われていたが、現行型は18V動作の6015ファンに変わっている。

そこで、降圧は18V→12Vであることを想定して定数を決定した。

標準の6015ファンは18V仕様。交換用ファンであるOmega Typhoon Gは12V 1.2W = 0.1Aなので、

(18V - 12V) / 0.1A = 60Ω

抵抗に流れるのは、

12V × 12V / 60Ω = 2.4W

1/4Wの抵抗を使う場合は、

2.4W / 0.25W = 9.6本 ≒ 10本

使う抵抗は、

60 * 10 = 600Ω

使用する抵抗はE24系列の近似値で560Ωか620Ωになる。

560Ω、もしくは620Ωの1/4W抵抗10本を並列につないで抵抗分圧することになる。

作ったのがこれ。筆者の手持ちに560Ωがなかったので、620Ω x 10で作った。

基板には秋月の両面スルーホールガラスコンポジット・ユニバーサル基板 Eタイプを使用。

これを電源ユニットの中に内蔵させるので、絶縁のために基板ケースを作成。

DC-DCコンバーターの設置のところで作った中継ケースを改造して、Eタイプの基板に合わせたものを作成した。

ThingiverseにEタイプ用ケースのデータを追加しておいた。

本体ファンの静音化

本体ファンが結構うるさいので、セオリー通り静音化した。

ファンと底面パネルの間にスペーサーを入れる方法もあるが、筆者にとって静音化は絶対なので、今回もノイズ源である吸入口のスリット部分を切除した。

交換用ファンにはOMEGA TYPHOON 薄型・超静音タイプを選択。

電源24Vに対し、12V動作のファンを接続するので、DC-DCステップダウンコンバータを介して降圧した。ただし、14V程度にカツ入れしている。

筆者は、速度可変のファンの場合抵抗分圧を採用し、定速回転のファンの場合はDC-DCステップダウンコンバータを採用するという使い分けをしている。

ヒートシンクファンの静音化

KINGROON KP3S 2.0のヒートシンクファンは3010ファンだ。

KINGROON KP3S 1.0のヒートシンクファンも3010ファンだったが、それより静かになっている。

それでも、静音の4010ファンと比較するとうるさいので、やはり交換することにした。

KINGROON KP3S 2.0のヒートシンクファンは、V6ホットエンドに抱き付かせるパーツで固定されている。

3010 to 4010の変換アダプターで4010ファンを固定することにした。

使える変換アダプターがTommykijima氏の以下のMODに同梱されている。

この中の「4010Adapter_Rev3.stl」というデータだ。

これをプリントして取り付け。ただし、若干左側の鉄板の壁に干渉して真正面は向かない。

ここでも交換用ファンにはOMEGA TYPHOON 薄型・超静音タイプを選択。

以下のページの「DC-DCコンバータ部の組み立て」以降を参照しながら取り付けた。

電源24Vに対し、12V動作のファンを接続するので、DC-DCステップダウンコンバータを介して降圧した。こちらも14V程度にカツ入れしている。

ヒートベッドの磁気ベースの貼り替え

KINGROON KP3Sの磁気ベースは高温に耐えない。

耐熱140度の磁気ベースが付属のPEIばね鋼板が売っているので、耐熱性のある磁気ベースに貼り換えた。

こうしておけば、ヒートベッド の設定温度が高くなることを気にせずフィラメントに応じて以下を使い分けられる。

  • デフォルトの樹脂ビルドステッカー
  • 純正ガラスプレート
  • 100円ショップの鏡
  • PEIばね鋼板

PEIばね鋼板とて万能ではなく、定着しすぎて剥がすのが大変な傾向がある。特にTPUは造形物を歪ませてしまうほど。TPUの場合、100円ショップの鏡がちょうどぐらいだ。

ちなみに、PEIばね鋼板付属の耐熱磁気ベースだとデフォルトの樹脂ビルドステッカーの吸着が、使えないほどではないが弱くなる。

パーツクーリングファンシュラウドの交換

造形物を冷却するパーツクーリングファンシュラウドは、片側から送風するタイプであるため、造形品質に限界がある。

KINGROON KP3S 2.0に適合する両側送風タイプのパーツクーリングファンシュラウドがThingiverseに公開されているので、これを利用するのが必然。

だが、底面を下にして造形すると取り付けのための板状の部分の強度が弱くなってしまう。

そこで、Remixを作成した。

変更点は以下の通り。

  • 一部壁厚が薄く、穴が開いてしまう部分があったので、その部分の壁厚を0.5mm厚くした
  • このパーツは直立状態でプリントするのがベストだが、そうすると取り付け用の薄い板状の部分の強度が落ちてしまう。板状の部分の厚みを1mm増やした
  • ネジ穴が小さく、そこにネジを入れると積層面から割れてしまうのでネジ穴を大きくした

パーツクーリングファンシュラウドには耐熱性が要求されるため、ABSでプリントした。

筆者のKINGROON KP3Sはまだエンクロージャーに入れておらずABSが使いづらいが、KINGROON KP3S自身で出力したかったため、プリントにエンクロージャーを必要としないFiberlogy EASY ABSを使用した。

普通のABSと違ってヒートベッドへのくっつきが明らかに強く、反りにくい。

やり残し

KINGROON KP3S 2.0は、3.0より3D Touchの取り付けに苦労しそうだ。

当面手動メッシュベッドレベリングで凌ぐことはできるが、4020ファン、パーツクーリングファンシュラウド、4010ファン、3D Touchを一挙に取り付けるパーツを新造する必要がありそうだ。

KINGROON KP3S 2.0はすぐ3.0に置き換えられたため短命に終わっており、2.0に適合するMODは数少ない。

いっそ、プリントヘッドを3.0にアップグレードした方がよいかとも思っている。